結婚式は恋愛のゴールから、未来の家庭生活へのスタートへ。結婚情報誌『ゼクシィ』の編集長・伊藤綾さんと、新刊『結婚を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが、今どきの結婚式のスタイルを通して、今求められている結婚マネジメントについて語る。

保育園やカフェを併設する結婚式場
年1度の「同窓会」で幸せを確認

伊藤:昭和的なこれまでの「幸せの基準」がそもそも今の価値観に合わなくなっている世の中にあって、カップルは何を自分たちの幸せとするかをすり合わせ、その答えを2人で一緒に見つけていこうとしている傾向があります。その答えを結婚式である程度表現し、ゲストに見守ってもらう。そのステップを踏むことによって、何となく明日からの道筋が決まるというか、腹が据わるというか。

いとう・あや/料理書籍の出版社を経て2000年にリクルート入社。ゼクシィ事業部に配属。2006年に首都圏版編集長。出産を経て2009年に復職し、2010年首都圏版編集長、2011年4月よりゼクシィブランド編集長。ブランディング、CMプロモーション、ゼクシィ本誌の編集出版、ブライダルマーケットの現状分析と未来予測等に従事。中長期的なカスタマーマーケティングをメディアづくりの基軸とし、2007年8月「花嫁1000人委員会」、2012年5月「花婿100人委員会」を設立。“5時に帰る編集長”として双子の育児との両立に挑戦中。

 ちょうど先日立ち会ったのは、披露宴が終わり、デザートビュッフェも終わった場面で、最後にサプライズで挙式が用意されているというもの。通常、挙式は披露宴より前に行うものですが、ゲスト同士もリラックスして仲良くなったところで、「自分たちはこういう夫婦になりたいんだ」という誓いを表現する。最後にフラワーシャワーで出て行くシーンは、ちょうどそのまま新生活に羽ばたくことを表現するような演出になっているわけです。

大塚:へええ、面白いですね。

伊藤:結婚式場側の提案がカップルたちの手助けになっている場合もあります。例えば、埼玉には、ゲストハウスの中に認可の保育園がある場所があるんです。

大塚:敷地内ということですか?

伊藤:そうです。ほかにカフェやレストランも併設している。なぜそんな開かれた空間をゲストハウスに作ったかというと、結婚した後も2人のよりどころとして、いつでもここに帰ってこられるように、という施設側の配慮だそうです。あと同窓会を開いている会場というのも増えています。

大塚:同窓会、ですか?

伊藤:ええ。同じ結婚式場で同時期に式を挙げたカップルが年に1回集まって、同窓会を楽しむのです。

大塚:ははあ。そこに1つの新しいコミュニティができるわけですね。

伊藤:そこで結婚したカップルがみんな幸せになっているね、という「確認」をお互いにするんです。それも彼らにとって、よりどころになっている。結婚式というものが明日からずっと続く新生活のスタートになるよう、ハードやサービス面でも進化していますね。

おおつか・ひさし/株式会社リクルートを経て、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にてMBAを取得。現在、オーダーメイド型企業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。東京・青山にあるダイアログ・イン・ザ・ダークで暗闇婚活「Kids」(婚活イン・ザ・ダーク・スペシャル)をプロデュースし、高率でカップル、成婚者を生み出す。著書に『40代を後悔しない50のリスト』など多数。

大塚:結婚式って確実に変わってきているんですね。昭和では一瞬のイベントだった結婚式が、今はむしろストーリー性や連続性を感じさせるようになってきた。

伊藤:式の全体を通して、これまでこんなふうに育ってきた、こういう家族や友人に囲まれて幸せだった、みんなに「ありがとう」を伝えたい。そして、これからも感謝の気持ちを忘れずに2人で幸せになりますので、見守ってください、と。こういう一連の流れがあるわけですね。

大塚:その肯定的人間観、素晴らしいですね。これは進化だと僕は受け止めたのですが、伊藤さんはいかがですか?

伊藤:そうですね。心の交流に加えて時間の交流、つまり過去にさかのぼって未来をみるという作業も結婚式に組み込まれているので、カップルにとって今まで以上にとても大事な時間になりつつあると思います。でも、それだけ様々な意味での「交流」が求められる時代なんじゃないでしょうか。不安定さを感じてしまう昨今ゆえに「絆を結び直す」という意味合いも、そこには込められている気がします。