夫婦仲を保つために必要なのは
定期的な「すり合わせ」

大塚:僕、久しぶりに今月号の『ゼクシィ』を買ったんですが、一番驚いたのが指輪のムック。私が結婚した20年くらい前とはまったくデザインが変わっていますね。婚約指輪と結婚指輪と、もう1つ重ねづけする3連リングとかも増えていて。

伊藤綾さん

伊藤:これもゴールからスタートへの変化を表していると思います。また同じ指輪でも、2人の誓いの言葉を外側に刻むとか、2人で手づくりできる工房で作るとか、オリジナルのデザインをオーダーするとか、何か意味を込めたいというのがあるようです。

大塚:なるほど、意味づけですね。

伊藤:指輪には、この先60年ぐらい続く2人の結婚生活で支えになってほしい、という気持ちがあるんだと思います。

大塚:そういえば「給料の3カ月分」とか言っている時代もありましたよね(笑)。

伊藤:夫婦になる、家族を作るというとき、今の若いカップルには支えになるものが求められていると感じます。その意味で、大塚さんの新刊『結婚を後悔しない50のリスト』に書かれているスキルはとても大切だと思います。大塚さんはこの本を執筆されて、夫婦が壊れないために究極的に大事なものは何だとお感じになりました?

大塚:先ほどの話では、最近のカップルは結婚式の際にすでにやっているという、「すり合せ」という作業です。

伊藤:やっぱりそうなんですねぇ。

大塚:本では「ベクトル合わせ」と呼んだり、「プロジェクトマネジメント」と例えたりしていますが、すり合わせと同じ意味です。マネジメントって構成員の多様な個性や価値観、過去などを包含して、プロジェクトを進めるわけじゃないですか。結婚もそれと同じロジックを使えると感じています。夫婦仲がいい人はそれが上手で、うまくいっていない人は欠落している。合わせられないんですね、相手に。

伊藤:「あうんの呼吸」で分かってほしい、というところでしょうか。まさに昭和的な感じで。

大塚:そうです。そして自分の価値観を相手に押し付けてしまう。

伊藤:私自身、結婚していて実感するのは、すり合せが大切だと分かっていながらも、いつも完璧にはできないということ。また、すり合わせるのを忘れてどんどん進んでいってしまうこともありますよね。そのとき、「あ、すり合せができてないかも」って察知できる能力ってすごく大事じゃないかと思うんです。それが早ければ早いほど修復しやすくなる。気づくたびに修復して、すり合せる努力をする必要があるんだな、と。

大塚:そうです、毎日の小刻みな「ベクトル合わせ」が大切なんだと思います。愛情とか相性って、結婚するときは大切だったかもしれないけれど、結婚式が終われば生活が始まるわけですから。例えば子どもに何を習わせるのか、あるいは今日何を食べるのかという小さなところから、きちんとすり合わせていく必要があると思いますね。

伊藤:本当にそうですね。結婚式のときに頑張ろうと思っていたはずなのに、育児や仕事で忙しく、いつの間にかすっかり忘れてしまっています。そこをどうやってチューニングしていくかが問題だと思いますが、実際には自発的に毎日やるのって難しいじゃないですか。

大塚:確かに、みんな日々の生活に追われていますからね。

伊藤:例えば結婚記念日など決まった折りに、夫婦関係を点検する機会があったらいいんじゃないかな、と思います(笑)。人間ドックみたいに(笑)

大塚:なるほど、「結婚ドック」か(笑)。それ、すごくいいですね。ぜひ周囲に広めたいと思います。