結婚観は結婚式のスタイルに最も表れる!結婚情報誌『ゼクシィ』の編集長・伊藤綾さんと、新刊『結婚を後悔しない50のリスト』の著者・大塚寿さんが、結婚式の過去と現在、その背後にある結婚観の変化を語る。
派手婚から地味婚、
そしてアットホーム婚へ
大塚:2、3年前、かつての同僚だった未婚女性たちから「素敵な男性を紹介して!」と頼まれたことがあったんです。彼女たちはバブル世代の40代。合コンをセッティングしようと、彼女たちの希望通りの男性を探したんですが、なかなか見つからない。じゃあ年齢を下げればいいかと思っても、逆に20代はすでに結婚しているんです。今は若い世代ほど結婚が早まっているんですね。
そこで、肌で感じたのが、結婚観って世代ごとに輪切りにしたように違うんだな、ということ。バブルを知っている世代と、バブル崩壊後に社会人スタートを切った団塊ジュニア、そのさらに下の世代でまったく違う。これは2、3年前の話ですが、『ゼクシィ』で結婚式に対する社会の傾向を常に見続けてきた伊藤さんも、その変化は感じられますか?
伊藤:ええ、実際に結婚式ってその時々の結婚観とかなり密接に関わっていますので、当然そこにはトレンドがあります。大まかに分けると、10年を1つの周期として推移しているように私は感じますね。
そもそも結婚式って人が生まれてから最初に使う、非常に高額な買い物。なおかつ、車や家と違って3時間で消えるというのが最大の特徴ですよね。
大塚:確かに短時間で数百万の消費をするわけですから、一発勝負とも言えます。
伊藤:人生でそう何度もない高額で贅沢な買い物ですから、そこで何を選ぶかでその人の価値観が出る。そこをきちんと見極めていくと、世代ごとに結婚式観は大きく分けられます。
もともと結婚式とは、家と家が結ばれて、それを披露するのが最大の目的でした。それが変わり始めたのがバブル世代から団塊ジュニア世代です。恋愛結婚が当たり前になり、「結婚式は2人のもの」になった。結婚式の主役は、あくまでも2人。それが特に物質的なほうに振れたのが80年代の結婚式で、本質的なほうに振れたのが90年代の結婚式だと思います。前者がいわゆる「派手婚」で、後者が「地味婚」。物か心か、ということで分かれるんですね。
大塚:なるほど。モノ消費からコト消費への変化、というわけですね。
伊藤:その通りです。ただ見え方は違いますが、両者ともに「2人が主役」。そして結婚式とは、あくまでも恋愛の「ゴール」だったという点は共通しています。これが2000年代に入り、「ゲストハウスウェディング」が増加することによって、大きく変化していきます。
大塚:レストランウェディングなんかも、その1つですか?
伊藤:レストランでのシンプルな食事会というスタイルはどちらかというと90年代、地味婚の時代に流行ったものです。しかし今では、チャペルや控え室、音響設備などが充実しており、一般の式場と同様に本格的な結婚式ができるところが増加しました。ゲストハウスというのは、レストランとは少し異なります。庭、プール、チャペルを併設し、ニーズに合わせてブライダル専門の対応ができる邸宅型の施設が増えていったんです。
大塚:そうか、確かに「こんなところに教会ってあったっけ?」と思うような場所に、チャペルが新たにできていますよね。考えてみれば、あれは結婚式場なんですね。
伊藤:90年代半ばに、ゲストハウスという場ができたときは、世の中に新鮮に受け入れられました。非常に斬新だったわけです。一軒家を貸し切って結婚式を挙げられるというのは、その当時本当に珍しかったので。
そして、庭があればそこでデザートビュッフェをする、プールがあれば水面に花を飾る、大きな空間があればそこでプロフィールビデオを上映する……。コト消費とモノ消費が掛け合わされて、結婚式の費用が非常に上がる要因にもなりました。05年に291.1万円だった結婚式費用は、11年には356.7万円にまで上昇しています。
大塚:この7年間で65万円も上がっているんですね。一度地味婚になったものが、斬新な施設の登場によって、結局お金をかける結婚式に戻ったわけだ。
伊藤:ただ、いわゆる「派手婚」に戻ったわけではありません。ここ数年、招待客の人数は横ばいで推移していますから、これは招待客1人あたりに掛ける金額が上がっていることを示しているんです。
それまで「2人が主役」だった結婚式が、ゲストや家族など「みんなが主役」になった。つまりゲストハウスの登場によってもたらされた一番大きな変化は、主体者が増えたことなんです。これを「アットホーム婚」と呼んでいます。