医師が「私のコネで入院させた」と証言
都は「保健所がやること」と把握せず

 陽性と分かったコロナ患者の容態を見極め、必要に応じて入院させるのは感染症法上、保健所の役割だ。ただ、保健所は感染経路や濃厚接触者の特定といった業務もあり、昨春の第1波から業務過多状態になっているのは周知の事実である。

 また東京23区や政令指定都市、中核市など一定規模以上の市は自らが設置者として保健所を運営し、それ以外の地域での保健所業務を都道府県が担う。都内の場合、23区と八王子市、町田市が保健所を設置し、他の多摩地域や島嶼部は都がカバーする。

 ただ、23区内を見ても大規模な病院は都市部に集中しており、東部には少ない。保健所管内で発生した患者全員を入院させることが難しいケースがあるため、都は昨年、入院調整本部を設置し、保健所の枠を超えた広域での入院調整を担っている。

 それが、冒頭で落胆の念を表した区幹部が言うように、十分に機能していないというのだ。一体どうなっているのだろうか。

「保健所が入院先の病院を探せなかったので、私が自分のツテで病院を探して、患者を入院させたんですよ」――。ある都内の開業医はダイヤモンド編集部の取材に対し、こう語った。複数の開業医が、同様の証言をしている。

 開業医が自らの医院でPCR検査を実施し、陽性と判明した場合は地元の保健所に届け出なければならない。保健所は感染症法に基づいて感染者を入院させるため病院を探すことになるが、前述の理由でそれが難しい。

 その結果、医師個人の人脈で入院先が確保できればいいが、人脈を持たない医師のクリニックなどで陽性と判断された場合、感染者は入院できないままとなる。ある都内の医療関係者は「補助金が入るコロナ病床はまさに公共財。診察を受けた医師のコネ次第で入院の可否が決まるような“命の選別”があっていいのか」と憤る。

 果たして、都内で実際にそんなことが起こり得るのだろうか。都福祉保健局医療政策部医療政策課の行本理課長は「保健所がやることなのでわからない」、同局感染症対策部防疫・情報管理課の担当者も「保険所がどのように入院先を確保しているのかわからないので、事例としてないとは言えない」と回答。都は実態をよく把握していないようだ。