民主党優位の下院(定数435)は1月13日の本会議でトランプ大統領弾劾訴追決議案を賛成多数で可決し、上院に送った。前回一丸となって反対した共和党から今回は共和党会議議長のリズ・チェイニーを含む議員10人が造反して賛成票を投じたため有罪評決への期待が高まった。
ところがそのわずか1週間後、弾劾決議に対する態度を表明する初の投票が上院で行われたときには共和党議員50人のうち賛成に回ったのはわずか5人のみ。議会襲撃事件直後は前大統領を異例の厳しさで批判していたミッチ・マコーネル院内総務もちゃっかり反対票を投じていた。これが政治だと言わんばかりの手のひら返しである。
共和党支持者の9割以上が
いまだにトランプを支持
結局、民主主義の要である議事堂が攻撃されても死者が出ても、共和党はトランプの大ウソと脅しの呪縛から逃れられないでいるのだ。国民の4割が自分は保守主義者だと考えているアメリカではいまだにトランプ支持者が多い。そんなトランプを敵に回すと2022年の中間選挙で勝てないと大半の共和党議員が恐れている。だから民主党が求めている議会でのトランプの宣誓証言も拒否した。
議事堂乱入事件後に行われた世論調査でも有罪と無罪の割合が拮抗していて事件前とほとんど変わっていないこともトランプ離れできない背景にある。共和党支持者で見るとなんと9割以上がいまだにトランプ支持だ。ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビの報道に偏った日本ではアメリカは「リベラルの国」だと思われているが、実は昔も今もれっきとした保守大国なのである。
このままではトランプの有罪判決は難しい。
トランプ弁護団の戦略は一点突破だ。「すでに大統領を退任して私人である前大統領を弾劾裁判の対象にするのは違憲だ」という主張である。選挙で自分の票が盗まれたというトランプの根拠なき陰謀論については「言論の自由を保障する憲法修正第1条の権利を行使した」と言い張る。その旨の反論書面がすでに上院に提出されている。