トランプ大統領ウクライナ疑惑の弾劾裁判の後、会見に臨むトランプ前大統領(2020年2月6日) Photo:Anadolu Agency/gettyimages

共和党造反議員の手のひら返しで
トランプは無罪の可能性

 有罪か、無罪か。

 ドナルド・トランプ前米大統領の史上初2回目の弾劾裁判が、過激なトランプ支持者の襲撃を受けて間もないワシントンの連邦議会議事堂で始まった。

 ウクライナ疑惑を巡る「権力乱用」と「議会妨害」に問われた1回目の裁判(2019年12月)で有罪評決を逃れたトランプだが、今回は退任直前に起きた前代未聞の政府中枢に対する攻撃を扇動した容疑だ。在任中の大統領が国家反逆罪を犯したに等しい。警察官を含む5人の死者まで出た。しかも教唆の証拠となる大統領の発言やソーシャルネットワークで流された現場の衝撃映像まで大量にある。

 それなら有罪は間違いないと思うのが当たり前だが、実はその当たり前が簡単ではない。なぜなら米議会で行われる弾劾裁判は常識も良識もかなぐり捨てた与野党の露骨な権力闘争の場だからだ。

 上院で行われる弾劾裁判では、通常の刑事裁判とは違って、100人の上院議員が陪審員兼裁判官の役割を務め証拠や意見を吟味して評決を下す。有罪宣告には出席議員の3分の2の賛成が必要だが、現在の上院は民主50共和50と勢力が拮抗(きっこう)しているため共和党議員17人以上が民主党に同調する必要がある。