不確実な時代ほど
「論理」より「直感」が大事!
──「自分から未来のイメージをつくっていく」「それを形にしていく」ということが、不確実な世の中における「1つの生き方」だと考えるようになったきっかけはあるんですか?
佐宗:これはイリノイ工科大学のデザインスクールに留学して、デザインを学んでいたときに感じたことなんですけど、普段からものごとを論理的に考えている人ほど、環境が悪化したときに「考えること」をやめられなくなるんですよね。
MBA出身で外資ファンドで働いていた僕の友人は、「これからの世界を見ているといいことないですよね。どうやって希望を持てばいいんだろう?」なんて言っていました。一方で、デザインの世界に身を置いている人たちなどは、一見バラ色とは言えなさそうな激変する環境をむしろチャンスと捉えていて、「このタイミングで何をつくればいいだろう?」というようにワクワクしながら構想を膨らませていたりする。
これってまさに「捉え方次第」だな、とそのとき感じたんです。不確実な世の中にいるとき「そこで生きていかなきゃいけない…」と思っているか、「自分で新しいものをつくれる!」と思っているかはすごく大きな差になる。
たとえば、環境変化のなかで「収入減」という事態が起こったとき、「積極的に何かを仕掛けよう」とするか、「諦めるしかない」と思うのか。これってすさまじい差になりますよね。究極的に言うと、世の中の「貧困」みたいな問題も、クリエイティブに今の状況を打開していく可能性をそもそも感じているのかどうかです。その差は、日々の生き方にも影響してくるし、この期間に行動を起こせるかどうかが、長いスパンで見れば大きな違いになっていくんじゃないかなと。
──「打開できる」と思えるか、「今の環境ではできない」と思うか。たしかに、その受け止め方が、とても大きな差になりそうですね。
佐宗:そういうときには「論理的なもの」「答えが確実にあるもの」ではなくて、直感というか、感性の側を生かしたほうがより生きやすくなると僕は思っているんです。それが1つの「不確実性に対する対処の仕方」というか、本質かなと思っています。
──なぜ不確実な世の中では「論理」より「直感」や「感性」を生かしたほうがいいんでしょうか?
佐宗:これは僕の原体験なんですが、20代後半にメンタルを病んだことがあるんです。外資系の会社でつねに売上目標やシェア前年比超えを求められる出世ゲームのなかでいったん昇進したのですが、その途端に働く意義を感じられなくなりました。
当時の僕はとても論理的な人間だったので、うつという問題に論理的に対処しようとしたところ、「自分はダメである→だからうまくいかない」というような思考サイクルから逃れられなくなってしまいました。
論理的であればあるほど「自分はダメである→だからうまくいかない」という流れが簡単に証明できてしまいますから。もともと論理思考っていうのは、再現性があるし、うまくいっているときはすごくいい。しかし、うまくいかなくなったときに、自らそれを打開できないという面があります。
他方で、「直感」の側、つまり、「今ない未来」をイメージするような非連続的な発想は、論理では止められない思考の流れを止めてくれるんですよね。こういう思考法を身につけておくと、悪循環に入ってもそれを打開できる。
わかりやすい「答え」がなくなっている今のような時代にあっては、論理思考だけで考えていくと「今までのモデルでは、どうやったってうまくいかない」ということがどんどん出てくると思います。そういうときこそ、「論理的に考えたら、うまくいかない。絶望だ……」ではなくて、「新しいものをつくっていくチャンスだよね」ととらえてみる。
コロナも、なかなかポジティブに解釈するのは難しい、まさに禍ですが、だからこそ、「この激変する環境から自分はどんな未来を手繰り寄せられるか」という未来発想が大事になりますよね。その意味で、「直感」からスタートする思考法というのは、「自分で自分の希望をつくる技術」だとも言えると思っています。