「原因は我にあり」と考えるのが、
成長する出発点である
ここまで考えて、ようやく僕はかぶとを脱ぎました。
「“保険屋”が保険を売ろうとするのが、なんで悪いねん」とあらがうのをやめて、「俺が間違っていた」と認めようと、素直な気持ちで思えたのです。
そして、連載第9回で触れた『鏡の法則』(野口嘉則・著)で説いていることと、水野監督の教えが、実は同じであると思いました。『鏡の法則』は優しく、水野監督は厳しいという違いはありますが、言わんとすることは全く同じことだと気づいたのです。
『鏡の法則』には、「私たちの人生の現実は、私たちの心の中を映し出す鏡であるという法則」のことだと記されています。
つまり、そのとき僕が突きつけられていた厳しい現実――後輩に拒絶され、多くの知人との関係性が傷つき、営業マンとしても行き詰まりつつあったこと――は、僕の心の中を映し出しているということです。一言で言えば、「原因は我にあり」ということでしょう。
一方、水野監督は、徹底的に「なぜ、失敗したのか?」と僕を問い詰めました。
それは僕を責めるためではなく、僕が同じ失敗を繰り返さないために、自分の中にある「失敗の原因」と向き合わせるためでした。
失敗したことを、環境のせいにしても、他人のせいにしても、成長することはできない。「原因は我にあり」と考えることが、成長の第一歩だということを叩き込もうとされたのだと思うのです。
原因は我にあり――。
そう考えるのは、正直キツいものです。
人間は「自分の非」を認めることに抵抗を感じる生き物ですし、「自分を変える」のもしんどいことです。僕もそうでした。
だけど、あのとき僕は、何人もの知人から拒絶される「孤立感」に苛まれていたうえに、新規顧客を紹介してもらえないために営業マンとしても「限界」が見え始めていました。だから、「原因は我にあり」と認めて、「自分を変えるしか、生きる道がない」と腹をくくるほかなかったのです。
そして、それは、たいへんありがたいことだったと、今は心の底から思います。
僕が「売ろう、売ろう」としたためにご不快をおかけしてしまった方々には、今も申し訳ない気持ちでいっぱいですが、その気持ちを率直に僕に伝えてくださったことに感謝の気持ちももっています。
なぜなら、だからこそ、僕は大事なことに気づかせてもらうことができて、その後、営業という仕事の「本質」に近づいていくことができたからです。もちろん、何度も失敗をしたり、追い詰められたりもしましたが、その度に「原因は我にあり」と考えることで、自分の成長へと結びつけていくことができたと思うのです。
そして、僕は、仕事がうまくいかずに「カベ」にぶつかると、「よしきた、成長のチャンスや」と本気で思えるようになりました。むしろ、うまくいってるときは成長が止まるので不安になるほどです
「成長は不快な場所にしかない」「原因は我にあり」と腹の底から思えれば、どんな苦難をもチャンスに変えることができると信じているのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。