『あなたのそばで明日が笑う』と同日夜には、NHKBSプレミアムで宮城発地域ドラマが放送された。それが、NHK仙台放送局が制作した草なぎ剛・吉田羊主演の『ペペロンチーノ』である(「なぎ」は、弓へんに前と刀)。あえてフィクションで表現した震災のリアリティーが反響になった。

 地元メディアが10年後の描き方にこだわり、ドラマを企画した理由について、演出した丸山拓也ディレクターが公式ホームページでこのように伝えている。「被災者の方々から教わった、生きる上で大切なことやふだんの番組では伝えきれない取材の実感をドラマに込めて伝えたいと思いました」。

日常を描くドラマの中であえて触れる

 この時期は、東日本大震災をドラマの主たるテーマにせずとも、レギュラー番組で記憶に訴えかける作品も見られる。

 今期の連続ドラマでは東海テレビ制作の『その女、ジルバ』がそうである。池脇千鶴が演じる人生負け組の40歳の主人公、笛吹新が人生観を変える場所に出合い、成長していく物語が本筋だが、福島県出身と設定された主人公のバックグラウンドを語る中で、東日本大震災に触れるシーンが作られている。主にそれが描かれたのは、2011年の地震と津波で職場も自宅も失った主人公の弟が上京するエピソードを展開する第4話。主人公は、東京にいた自分が故郷のためにできたことは「わずかな募金とささやかなボランティア」と心のわだかまりをつぶやき、一方で弟は「あっという間のようで長かった」と言葉にした。

 視聴者の受け止め方がそれぞれあることから、主たるテーマではない場合は慎重に扱われるが、気負いないセリフが多くの視聴者から好意的に受け止められていた。

  『その女、ジルバ』では震災だけでなく、太平洋戦争によって人生が変わった登場人物たちも扱っている。戦争も震災も時を経れば経るほど、一様に語りにくくなる。だが、それをタブーとすることなく、日常を描くドラマの中であえて触れることで、風化させない役割を持ったドラマにもなった。

 カメラが捉えた記録映像から、ニュースやフィクションで描く震災まで、さまざまな角度から、テレビが震災後10年の今をずっと丁寧に伝え続けていることは間違いない。

 この10年で変わったのは、むしろテレビそのもののメディアとしての優位性ともいえる。テレビがYouTubeやネットフリックスの勢いにのまれる危機感もあるせいだろうか、記憶に残るようなメッセージを届けることにこだわった作品が多かった。後世にどのように残していくべきか、自発的に考えさせる場を与えることもテレビのひとつの役割にあるだろう。