すべては親のメンツのために

 中国のある報告によれば、中国では毎年10万人の青少年が自殺によって命を絶っているという。その最大の理由は、逃げ場のない「学業のプレッシャー」だ。

 教師は今なお絶対的存在であり、学生たちは教師の指示に従い、授業と宿題に追われる毎日を過ごしている。近年は教師と保護者をつなぐ連絡網がスマホアプリに取って代わっているが、宿題管理や生活態度をめぐる「教師による叱責」はその場でクラス全員に共有されることにもなり、保護者たちは恐々としている。

 保護者が子どもに「ほかのことは何もしなくていいから、とにかく勉強さえしてくれればいい」と懇願するのは、“親のメンツ丸つぶれ”を恐れるからでもある。近頃中国では、自分の靴のひもも結べない子どもが珍しくないと聞くが、それは「子どもには徹底的に勉強を要求し、勉強以外のことは親が何でもやってあげるというひずみが存在しているせい」(中国の教育機関関係者)だという。この教育関係者は背後にある独特な社会をこう説明する。

「中国では、貧困家庭の子でも、成績さえ良ければ自分の運命を変えられると信じられています。子どもの成績は、子どもの将来のみならず家族全員の運命を決めます。試験の点数や受かった大学がいいものでなければ、親たちは後ろ指をさされ、小さくなって過ごさなければなりません。子どもたちは親のメンツのために勉強させられているのが実情なのです」

 中国では、農民の子どもであろうと政府役人の子どもであろうと、受験に合格さえすれば人生は勝利するという成功神話がある。そのルーツはほかでもない「試験に合格すれば誰でも官僚になれる」という科挙制度にある。