RPA導入成功のためには部門をまたいだチームで戦略を立てる
――適用範囲を広げる先進的な企業の一方で、導入してもなかなかうまくいかない、当初のPoCで終わってしまうという企業もあると聞いています。RPA導入に失敗する企業では何が起きているのでしょうか。
RPAの導入や適用範囲の拡大には、それなりのリスクが伴います。RPAの導入・拡大を利用部門任せにすることは、秩序なきRPA化要求の増大をもたらしたり、レガシーシステムの無用な延命にもつながりかねません。利用部門の自由度を奪いたくないという考えは間違いではありませんが、本来的には、RPAの導入・拡大に必要な、ガバナンスを担保したり、利用・活用にかかわるガイドラインを作成し、教育していくような、クロスファンクショナルな組織がなければ、うまくいかないことが多いと思います。
ただ、いきなりしっかりしたミッションを持った推進組織を立ち上げることは、あまり現実的ではありません。センター・オブ・エクセレンス(CoE)と呼ばれる組織横断的専門集団を立ち上げるような企業でも、最初はIT部門や利用部門、DX推進組織などから選抜した3〜4人程度のバーチャルチームから始めるケースが多いようです。小さく、やりやすい形から始めることが重要です。
――RPAの導入・拡大に失敗しないためのプロセスやポイントを最後に伺います。
現在は、黎明期に比べて導入済み企業も多数あり、コミュニティも発達しているため、情報が豊富にあります。まずは、情報収集を行い、現状をきちんと分析・把握することです。とはいえ、調査ばかりをしていても先に進まないので、自社はRPAを使って、どういったゴールに到達したいのか、業務自動化の戦略や方向性を大まかに描いておくことも大切です。
RPAを使って、現場の業務をできる限り自動化していくのか、あるいは一部の業務の自動化さえできればいいのか。例えば、将来的にBPR(ビジネスプロセス・エンジニアリング)を行い、なくすことも検討している業務であれば、一時的なつなぎで十分です。そういった方向性を定めたうえで、自社にとって必要な情報を集めていきます。
ある程度めどがついたら、トライアル・PoCに取り組みます。初めての取り組みには失敗がつきものです。経営陣は失敗を許容することが肝心です。ただし、なぜ失敗したのか、失敗から何を学んだのかということをきちんと説明する責任は持たせることです。