主人公にリアルな自分を投影

編集者 実際に仕事をしてみてどうでしたか?

渡辺 私の場合は、ヘンに複雑なストーリーにはせず、基本的には前著の内容を忠実にマンガのシナリオに起こすというスタンスで取り組みました。ベースとなるのは「齋藤先生と安住アナが明治大学の授業で『話すチカラ』に書いてあった内容を教える」というストーリーです。

ただ、延々と授業シーンが続くとダレてしまうので、伝えるメッセージはそのままに、ところどころシチュエーションを変えています。なので、どんなシーンを設定するかというのが一番の悩みどころでした。当初は「あーでもない」「こーでもない」と考えあぐねていましたけど、1話ずつ書き進めていくうちに、主要なシチュエーションが絞られていった感じですね。

百田 私はもともと4コマとかエッセイマンガを中心に描いていて、「日常あるある」を描くのが好きだったんです。なので、読者の方々に「共感してもらえたらいいな」と思いながら、いただいたシナリオにエッセンスを上乗せしていきました。

あと、主人公の大学生・美桜ちゃんが、話すのが苦手なネタも盛り込んだんですけど、それはほぼ私の実体験なんです。美桜ちゃんが落ち込んだり失敗したりするネタのアイデアには困らなかったので、そこは良かったと思います。

編集者 主人公の美桜ちゃんに、ご自身を投影する部分があったんですね?

百田 ありましたね。最初に自己紹介がうまくできなくて落ち込んだりするところや、「えー」とか「あー」をいっぱい言っちゃうとか……。たぶん、そこには、ほぼリアルの私が入っていると思います。

編集者 渡辺さんも相当な人見知りであることを公言してますけど(笑)、シナリオを作るときに自分を投影させたところがあるんじゃないですか?

渡辺 うーん、その点では私が主人公の美桜ちゃんについていけたのは、序盤まで。その先は、美桜ちゃんの成長っぷりが、ただただ眩しくて。私は早々にチギられた感じです(笑)。

編集者 (笑)。そう言えば、渡辺さんの見た目が、美桜ちゃんのお父さんに似ていると思うんですけど。

渡辺 あー、そう言われればそうかもしれないですね。

百田 朗らかで優しそうなお父さんにしようと思って、メガネをかけてキャラクターをつくったんですけど……。

渡辺 いずれにしても、私の場合は女子大生の美桜ちゃんというより40代半ばで子どももいることもあって、お父さん目線になってしまうところはありますね。

編集者 今回は、奇しくも僕を含めた3人ともTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』(にち10)のリスナーつながりということで、なかでも一番のヘビーリスナーである百田さんが、随処に“にち10ネタ”を盛り込んでくださったんですよね。

安住さんから戻ってきた校正刷りにも「ラジオに詳しい方が画を描いて下さっているのですね。ありがとうございます。」というメッセージがありました。ほかにも、百田さんがサウナ好きの番組スタッフを描いたら、安住さんが「サウナにハマっているスタッフが実在します!」とリアクションするなど、見事なシンクロが起きていたのもビックリでした。

百田 実を言うと、安住さんのチェックが終わるまでずっと胃がキリキリして痛かったんですけど、そんなコメントをいただいたと聞いて、めちゃくちゃ嬉しくて……。思わず、感極まって泣いてしまい、夫がドン引きしてました(笑)。でも、安住さんのコメントをいただいたときは、本当にすべての努力が報われた瞬間だったと思います。

(次回に続く)