『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

独学の達人が答える「やりたいことができないから、今の場所でやる気が出ない」への超納得回答Photo: Adobe Stock

[質問]
入りたい学部に入れなかった私は、何をすべきでしょうか?

 こんばんは。関西の私大に通っているしがない大学生です。ちなみに現在2年生です。もともと文学部で日本史を勉強したかったのですが、落ちてしまい、同じ大学のあまり興味のない、滑り止めで受かった学部に在籍しています。

 正直毎日が苦痛です。高い学費を払いながらやりたくない勉強や興味のない勉強をひたすらやり続けて、一切日本史と触れ合うことができない現在の状況が苦しいです。授業中寝ちゃいけないって思ってるのに寝てしまうし、寝てしまった結果自己嫌悪に陥るしで一切勉強に対するやる気が起きません。やり始めたらやる気は起きるって言いますけど、例えば必修科目の数学だと、やっててもどこで使うのかとか、なんでこの解き方になるの? とか考えてるうちに授業が終わってしまい、やる気もなにも起こりません。

 僕は浪人していて、とにかく入れるところに入らないとって気持ちが強く、受験の時は文学部じゃなくても受かったところでも別にいいかという気持ちがありました。ここは反省すべき箇所ですし、過去は変えられないので嘆いても仕方ありません。しかし、自分を見つめ直すと日本史の勉強、特に中世の差別について勉強したくなりました。現在は本を読んだり自分なりにフィールドワークっぽいことをしたりしてます。

 ただ、勉強したいことは置いといて、現在の状況としてこのままのモチベーションだと留年しそうですし、転学部も正直あまり現実的ではありません。

 読書猿先生に相談するのか非常に悩みましたが、解決とは言わないまでもアドバイスや学部選びを間違えた時に読むと良いかもしれない本をお教えいただけたら幸いです。失礼します。

大学は「こんなはずじゃなかった」に直面する場です

[読書猿の回答]
 なんともったいない。歴史学という総合性の高い学問を志した方が、他の学問分野を学べるせっかくの機会を無駄にするというのが信じられません。

 もう一つ、もったいなく思うのは、自分の無知に直面する機会が最も多くある大学生活の最初の一年間を、「こんなはずじゃなかった。こうなってしまったのは行きたい大学・学科へ行けなかったせいだ」という間違った原因帰属によって棒に振ってしまったことです。

 大学は、まだ誰も知らない知識を探求する場所であり、そこでの学生生活と研究生活は、基本的に「こんなはずじゃなかった」に直面する連続です(希望する学部学科へ進んだ人たちにとっても)。だからこそ、その中で無知や未知に向かい合う態度と対処するスキルを身につける機会が得られるのです。

 一年前のあなたは学部選択を間違っただけの新入生でした。今のあなたは1年以上経つのに「大学生になる」ことから逃げ続けているように思えます。

 以前も引用していますが、全編名言しか無い『ちはやふる』の中でも屈指の名言だと思う、机くん(駒野勉)の次のセリフをどうぞ。

「やりたいことを思いっきりやるためには
やりたくないことも思いっきりやんなきゃいけないんだ」
(末次由紀『ちはやふる』7巻)

 再び歴史学の話に戻るなら、「好きでないことはやりたくない」を押し通していけるなら、「自分の仮説に合わない史料は無視してかまわない」といったところまで行き着きます。

 そうするのは自由ですが、私達はそんな人が書いたものを歴史書とは呼ばないでしょう。