保険料負担は新たに発生するが…

 前回の内容を整理しておこう。夫が失業者または低所得者である場合に妻が厚生年金に加入するメリットは、

 1.国民年金保険料を支払う必要がなくなる
 2.自分の年金保険料が安くなる
 3.老後に厚生年金が支給される

 の3つだ。夫が自営業者で年間の所得(収入マイナス経費相当)が130万円以上の場合には1.のメリットはないが、2.と3.のメリットは享受できる。この場合も、厚生年金に加入するべきであることは比較的明確であろう。

 夫がサラリーマンである場合には、3.のメリットは享受できるが、払う必要がなかった自分の保険料を払う必要が出てくるので、さまざまな考え方がある。しかし、筆者はサラリーマンの妻であっても積極的に厚生年金に加入して保険料を払うべきだと考えている。

 公的年金について考えるとき、最も大事なことは、それが保険である、ということだ。老後資金を考えるときの最大のリスクは「長生きしている間にインフレが来て、老後の蓄えが底を突いてしまう」ことだが、それに備えるための最も心強い味方が公的年金だ。拙稿『普通の会社員を老後貧乏に陥らせる「2大リスク」の避け方』を併せてご参照いただければ幸いである。

 年金は保険であるわけだから、「早死にをしたら損だから、年金保険料は払いたくない」というのは「火事にならなかったら保険料がもったいないから、火災保険には加入しない」というのと同じことである。

「火事で家が焼けた場合」を「長生きをしている間にインフレが来て老後資金が底を突いた場合」と読み替えればよいだけの話である。火災保険に加入している人は、ぜひとも公的年金を前向きに受け止めてほしい。

 保険というと、顧客が皆で出し合った資金で困った事態に陥った人を助ける制度であり、期待値がマイナスなのは仕方ない、というのが普通である。

 民間保険会社等の提供する年金商品は、顧客が支払った保険料から保険会社のコストと利益を差し引いた残りが顧客に年金として払われるのだから、「期待値を考えれば損な取引だが、安心を買っている」のである。

 しかし、公的年金はそうではない。年間120万円の報酬で30年働いた場合の損得を計算してみよう。厚生年金保険料は年収の9%強であるから、年間11万円程度である。これを30年間払うと330万円程度になる。

 一方で、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せする形で厚生年金が毎年約20万円受け取れるので、65歳から17年間受け取れば元が取れる。女性はもちろん、専業主夫であっても平均寿命まで生きれば元が取れるというわけだ。