「相関関係」と「因果関係」を
混同するな
その点で強く感じるのは、多くの会社は相関関係と因果関係を混同していることだ。
「AとB」は関係しているというのが相関関係であり、「AだからB」というのが因果関係だ。
AIやデータサイエンティストは相関関係を導き出す。
データ分析の世界では有名なので、知っている人も多いかもしれないが、「スーパーマーケットで紙オムツを買った人は一緒に缶ビールを買う傾向がある」というバスケット分析(同時に何を買うかの分析)のデータがある。
これは紙オムツの購買と缶ビールの購買に相関関係があるというデータであって、現場で活かすには実験が必要だ。
A案:オムツ売り場にビールを置く
B案:ビール売り場にオムツを置く
相関関係はエクセルでも簡単に見つけられる。相関関係から因果関係を導き出すには、実験が必要だ。
因果関係を証明するためには、実務を知らなければならない。
つまり、現場の社員がデータを活用しなければならない。
このA案とB案、果たしてどちらが有効なのだろうか。
いろいろな意見があるだろうが、おそらくまともな担当者なら、「そんな実験やめてくれ」と言うだろう。
お客様の立場で考えたら、オムツ売り場のビール、ビール売り場のオムツ、いずれもふさわしくない。
データ解析のプロは会社の実務にあまり興味がない。
逆に業務担当者にとっては死活問題だ。
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。