東京女子御三家「桜蔭」が、創立100周年に向けて取り組むこと桜蔭といえばこの大正時代から続くジャンパースカートの制服が有名。齊藤校長も中高時代に着用していたものが手に持っている人形のタイプで、左のものは創立時のものでベルトの位置などが異なる

女子進学校に共通する悩みは、学校におカネがないことだろう。男子進学校であれば、企業経営者となった卒業生が法人名義で寄付してくれることも期待できるが、女子校では1億円を集めるのにも苦労する。創立100周年を前にして、桜蔭では東館の建替えが始まろうとしている。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

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東京女子御三家「桜蔭」が、創立100周年に向けて取り組むこと

齊藤由紀子(さいとう・ゆきこ)
学校法人桜蔭学園理事長、桜蔭中学校高等学校校長

学校法人桜蔭学園理事長、桜蔭中学校高等学校校長。27回生。お茶の水女子大学文教育学部文学科国文学国語学専攻、同大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。専攻は近世文学。母校に国語科教師として赴任し、2017年から現職。
 

遠目にも分かる桜蔭の制服

 東京の私立中高一貫女子御三家は、女子学院がプロテスタント、雙葉がカトリックとミッション系なのに対して、桜蔭は非宗教系である。強いて言えば、高等師範学校の文化が色濃く残る“教職系”が伝統なのかもしれない。

東京女子御三家「桜蔭」が、創立100周年に向けて取り組むこと[聞き手] 森上展安・森上教育研究所代表
1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――女子学院は制服をやめて服装は自由になり、雙葉はセーラー服ですね。桜蔭はいまでは珍しくなったジャンパースカートの制服を維持していますが。

齊藤 現在の制服は戦後定められたもので、いくつかのデザインの中から生徒が選んだものです。旧制服にはなかった上着(ブレザー)も付けたいと希望があったそうです。昔のものはローウエストで、襞(ひだ)が後ろだけにあり前にはないという変わったものでしたが、当時としてはモダンなものでした。着づらいということで、いまのような形になりました。

 生徒会で「制服をなしにする」という議論は何度か起きていますが、「制服がなくなると(服を選ぶのが)面倒くさい」ということで、そのままになっています。

――ところで、2024年には創立100周年を迎えますが、何かお考えですか。

齊藤 東館を建て替えます。校地の狭い小さな学校ですから、2号館、3号館、4号館、5号館(1970年)、西館(2003年)、別館(2004年/講堂)と、これまでも少しずつ校舎を建ててきました。

 新しい校舎は、東館(5号館を改称)の一部を取り壊して造ります。この夏の終わりから取り壊し工事が始まり、約2年半、99周年となる2023年冬くらいに竣工する予定です

――100周年の前年に完成するわけですね。どのような施設になりますか。

齊藤 新しい校舎では、縦長のフロアに一列に教室が並ぶように考えています。化学や物理の教室なども同じフロアにまとめようと考えています。その他にも、フロアごとに生徒が集まることができるコミュニティースペースも設けます。体育館や温水プールも使いやすく生まれ変わります。

 東館には現在、屋内温水プールがありますが、しばらく使えなくなります。その間は授業やクラブ活動で不自由をかけることになります。