罪状は、社員の残業を容認した罪
犯罪と言っても、刑法や民法で裁かれるような犯罪を犯していたわけではありません。
私の罪状は、言うなれば、
「社員の残業を容認した罪」。
けれど、当時の私には、「犯罪を犯している」という意識はありませんでした。なぜなら、
「残業は、減るはずがない」
「社員が遅くまで仕事をするのは当然だ」
「残業を減らせば、会社の利益も減ってしまう」
と思い込んでいたからです。
でも、私の考えは間違っていました。
残業が増えれば、人件費や固定費が増えて、会社の経営を揺るがします。
残業が増えれば、訴訟リスクが増えます(→167ページに飲食店の実例あり)。
残業が増えれば、社員の健康を損(そこ)ないます。
残業が増えれば、新卒社員がどんどん辞めていきます。
私は、会社にも社員にも、大きなリスクを負わせていたのに、残業を防ぐ努力をまったく怠っていた。
実際に、「社員の残業を容認した罪」という罪状はありませんが、これは、犯罪と同じです。
私は常々、経営サポート会員(武蔵野がコンサルティングをしている会社)を集めては、「社長の無知は犯罪である」と説いていたのに、そんな私が罪を犯していたのだからお恥ずかしい限りです。
「ダスキン事業部」=「ブラック事業部」
1990年代の武蔵野は、漆黒暗黒(しっこくあんこく)の超・超・超ブラック企業でした。
社員の久木野厚則(ITソリューション事業部長)と小林哲也(ダスキンクリーンサービス事業部長)は、入社早々、わが社の企業体質に「目を疑った」と言います。
「武蔵野へ面接にきた日のことは、今でも鮮明に覚えています。ダスキンの会社なのに驚くほど会社が汚くて(笑)、玄関の脇で5、6人の社員がたむろしていて、みんな頭に剃り込みが入っていたんです」(久木野)
「入社初日にやらされた仕事が、ライバル会社を『尾行すること』でした(笑)。ライバルの営業マンが武蔵野のエリアに入ってきそうになったら、『向こうに行け』と言う(脅す)のが仕事です」(小林)
久木野と小林が入社時に配属された「ダスキン事業部」の別名は、「ブラック事業部」でした。
「週休2日、9~17時」の求人広告を出していたものの、実際には、コンビニエンスストア「セブンイレブン」開店当初の営業時間(7~23時)を超えた勤務体系で、「週休1日、午前7~翌1時勤務」状態だったからです。
アルバイトで入社した久木野は、すぐに「ブラック事業部」の洗礼を浴びました。