原理原則から離れると「無理」が生じる

――安藤さんの話を聞いていると、たしかに非常にシンプルで、原理原則に則っているように感じます。では逆に、なぜ現代の多くの組織は、そういった複雑なものがたくさんくっついてしまっているんでしょうか?

安藤:一つは、そのほうが人間、楽だからでしょう。

 原理原則で言うと、お客様に商品やサービスを提供して、お客様から対価をいただく。

 対価をいただけるから、みなさんに給料が払える。

 対価獲得のために貢献しないなら、給料はもらえないよ、ということです。

 つまり「この会社で働く」と決めた以上は、対価獲得に貢献しなければ、給料は貰えない存在です。

 そう考えれば、学校のように上司が部下のモチベーションを高めてあげなきゃいけない、というのは、本来的には必要ありません。

――楽なほうに流れているだけなんですね。

安藤:そうです。社会的な風潮もそっち側へ流れていますし、そういうマネジメントをしたり、そういうマネジメントの大切さを語ることで、利益を得ている人もいますから。

 なんとなく、仲良く、楽しくやって、それでお金が貰えるなら、そのほうが楽ですからね

 でも、そんな状態は原理原則に反しているので、どこかに無理が生じてきます。反対に、識学のロジックは非常にシンプルで、誤解や錯覚がなくなるので、じつは上司にとっても、そこで働くメンバーにとっても、ストレスが減るんです。

――反発する人が出てきたりしませんか?

安藤:ここで話すようなイメージだけで捉えると、「冷たい」とか「厳しい」と反発する人もいますけど、実際に、識学のロジックで組織運営をしてみると、思ったほどの反発は出てきません

 従来型マネジメントで既得権益を得ている人はもちろん反発しますが、こちらのやり方のほうが、複雑なストレスが軽減されて、仕事に集中できるようになるし、結果も出る。

 そういう意味で、賛同してくれる人はとても多いですし、結果を出している組織は今すごく増えているんです。

「流行りのマネジメント理論」は、なぜうまくいかないのか安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社を経て、ジェイコム株式会社(現:ライク株式会社)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2021年1月現在、約2000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』がある。
「流行りのマネジメント理論」は、なぜうまくいかないのか