リモートワークが長期化している今、わかりあえない上司と部下の「モヤモヤ」は最高潮に達しているのではなかろうか。さらに、経営層からの数字のプレッシャーが高まる一方で、
「早速夜更かししそうなくらい素晴らしい内容。特に自発的に動かない組織のリーダーについてのくだりは!」
「読み始めていきなり頭をパカーンと殴られた。慢性疾患ってうちの会社のこと? すべて見抜かれている」
「『他者と働く』が慢性疾患の現状認識ツールなら、『組織が変わる』は慢性疾患の寛解ツールだ」
「言語化できないモヤモヤの正体が形になって現れる体験は衝撃でした」
職場に活気がない、会議で発言が出てこない、職場がギスギスしている、仕事のミスが多い、忙しいのに数字が上がらない、病欠が増えている、離職者が多い……これらを「組織の慢性疾患」と呼び、セルフケアの方法を初めて紹介した宇田川氏。我々は放置され続ける「組織の慢性疾患」に、どんな手立てを講じられるのだろうか。著者の宇田川氏を直撃した。
問題に名前をつける
「妖怪探し」とは?
「2 on 2(ツー・オン・ツー)」では、明らかになった慢性疾患に名前をつけます。
さらに、それを絵にして具体的に見える形にします。
これを私は、組織に住んでいる「妖怪探し」と言っています。
妖怪に名前をつけて絵に描いたら、その生態を研究してみましょう。
このように問題に名前をつけ観察をする方法を、臨床心理家のマイケル・ホワイトは「問題の外在化」と呼びました。
問題の外在化により、問題は様々な面を持っていることが見えてきます。
問題に名前をつけ、絵に描いてみて、今までとは違った面を見ていくことを「当事者研究」と呼びますが、ぜひみなさんには、問題に名前をつけ、妖怪探しの当事者研究を行ってもらいたいのです。
当事者研究は、北海道浦河(うらかわ)町にある「浦河べてるの家」という精神障害ケアのコミュニティが生み出したもので、複雑な精神障害のケアに対して、非常に大きな成果を挙げています。
精神障害も慢性疾患の一つですが、当事者研究は組織の慢性疾患に非常に有用だと思っています。当事者研究のポイントと注意点を列挙してみます。
妖怪探しの
「当事者研究」のポイント
●問題に名前をつける
●絵に描いてみる
●どんなときにやってくるか
●どんなものを食べ物にしているか(忖度、あきらめ、疲れ、焦り等)
●どんなときに暴れるか
●どんなときに協力してくれるか
●どんな匂いか(汗臭い、青臭い、甘い香り、酸っぱい匂い、目が痛くなる等)
●妖怪の口ぐせとは何か
●どんな材質か(ベトベトしている、伸縮性がある、とても硬い等)
◎注意点
●笑いを大切に
“妖怪探し”と思ってみんなで取り組んでみると、深刻な問題でも、今までと雰囲気が変わってきます。深刻な問題であっても、妖怪の名を聞くと、みんなが面白がりながら問題にアプローチできるからです。
妖怪探しによって問題解決モードから自然と対話モードになり、問題自体が何かを探る、探検ゲームのような感覚が生まれるのです。ぜひ実感していただけたらと思います。
定期的に「妖怪」観察をしながら、みんなで観察結果を持ち寄って2 on 2を行いましょう。
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経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。