いつでも笑えるように「心の準備」をしておく
このように、笑いにはさまざまな機能がある。それは信頼を築き、絆を深め、同期(シンクロナイズ)を実現する。創造性が刺激され、良いアイデアが生まれやすくなる。
一緒に笑ったり冗談を言ったりするチームは、問題点をオープンにし、共有しやすくなる。ストレスに対処し、問題を創造的に解決するためにも重要だ。
では、職場で笑いの恩恵を受けるにはどうすればいいのか?
心理学者のロバート・プロバインは、それは「笑いを受け入れる準備をすること」だと提案する。「おかしさのハードルを下げ、小さなことでも笑いの対象にする。いつでも笑えるように心の準備をしておく」。
交流の機会をつくるのもいい。社内で、人が集まること自体を目的にしたイベントを催すのもいい。
笑いは、みんなが自由に会話をできるこのような集まりでこそ起こりやすい。ただし、会社にとって笑いが起こりやすい雰囲気をつくる方法を見つけるのは簡単ではない。
大切なのは、自分たちのチームにあった方法を探し、見つけたらそれを継続することだ。BBCラジオ1のデジタル部門の責任者だったアンディ・プルストンは、同局には送別会でのスピーチが面白いという伝統があったという。
社内には、別の道に進むことを選択した退職者を疎んじるような空気はなく、逆にその人が人生の一時期をラジオ1で過ごしたことをユーモラスで感動的なスピーチで祝福しようという雰囲気があった。
「私たちは送別会のスピーチをとても重視していた」とプルストンは言う。
「そのスピーチを聴いた新人に、この職場の文化を理解してもらうという意味もあった。退職者をどんなふうに祝福し、別れを告げるかを見ること以上に、新しい職場をよく知る方法はない。勤務期間が長かった人たちに対しては、スピーチはその仕事やチームへの貢献のすべてに感謝する機会であり、言わば生きている人に送る弔辞のようなものでもあった」。
プルストンは、チームメイトや同僚から退職者についての思い出の言葉やジョーク、写真を集め、心からの敬意を表してそれを手渡した。
これらの別れの言葉を通して、チーム全員が自分たちの職場がどんな場所なのかをあらためて意識するようにもなった。送別会はいつも「たくさんの笑い」で満たされていたという。
不況の時代には、会話や笑いをチームの優先事項にすべきだという考えは、不要でつまらないものに思えるかもしれない。たとえ、自分はそうは思わなくても、そういう考えを持つ人はいるだろう。
もし、誰かから反対意見を言われたら、ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンのエピソードを伝えてみてほしい。次にインスピレーションが湧いたとき、きっとあなたは笑っているだろう。