それから私のように、ちっぽけで気の弱い人間ができることは一体何だろうと考えるようになりました。本書はその一歩として著しました。

 最も大きなものは、北海道浦河町にある精神障害ケアのコミュニティ「浦河べてるの家」での実践です。浦河べてるの家で最初に行われ、全国に広まった当事者研究の取り組みからは、医学的な意味での病気を治すことではなく、その背後にある各々の人生の苦労に向き合いながら、病気や仲間とともに歩む実践を学ぶことができました。単によい実践を行うだけでなく、一定の仕組みとして整備されることで、多くの人が恩恵を受けました。これは、本書が目指したところでもあります。

 また、薬物依存症ケアの研究と実践も大いに参考になりました。とりわけ、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長兼薬物依存症センターセンター長の松本俊彦先生は薬物依存症ケアのプログラムSMARPP(スマープ)(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:せりがや覚せい剤依存再発防止プログラム)という具体的な実践の仕組みをつくり、展開されています。多くの人たちが参加できるこの取り組みは、大変素晴らしいものです。

 この本で書いたこと、研究を通じてわかったことは、ごく一部です。しかし、私たちが目の前の現実で芽生えた違和感や見すごせない心の動きを、どうやって現実を変えていく力にできるのか。どうやったらその役に立つことができるのか。これからもこれをテーマに研究と実践を重ねていきたいと思います。

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