リモートワークが長期化している今、わかりあえない上司と部下の「モヤモヤ」は最高潮に達しているのではなかろうか。さらに、経営層からの数字のプレッシャーが高まる一方で、
「早速夜更かししそうなくらい素晴らしい内容。特に自発的に動かない組織のリーダーについてのくだりは!」
「読み始めていきなり頭をパカーンと殴られた。慢性疾患ってうちの会社のこと? すべて見抜かれている」
「『他者と働く』が慢性疾患の現状認識ツールなら、『組織が変わる』は慢性疾患の寛解ツールだ」
「言語化できないモヤモヤの正体が形になって現れる体験は衝撃でした」
職場に活気がない、会議で発言が出てこない、職場がギスギスしている、仕事のミスが多い、忙しいのに数字が上がらない、病欠が増えている、離職者が多い……これらを「組織の慢性疾患」と呼び、セルフケアの方法を初めて紹介した宇田川氏。我々は放置され続ける「組織の慢性疾患」に、どんな手立てを講じられるのだろうか。著者の宇田川氏を直撃した。
忘れられない日
2019年12月4日は、私にとって忘れられない日です。
この日、ペシャワール会とPMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス)でアフガニスタンでの人道支援を続け、砂漠になった荒れ地を緑豊かな大地に変える活動を積み重ねてきた中村哲医師が銃撃を受け、亡くなりました(享年73)。
かつて私が西南学院大学に在籍していた頃、西南学院中学校出身だった中村さんが、西南学院大学で講演されました。
講演の中で、中村さんは「恵みと和解」という言葉を用いていました。みんなが争いをやめ、互いに和解すれば、砂漠もこんなに緑豊かな農地になる。私たちにはすでにそんな世界が与えられているのだと、ご自身の活動から切々と説かれた姿に大変感銘を覚えました。
講演後、私は茶話会で1時間半ほど中村さんとじっくりと話をする機会に恵まれました。私は、命がけで人道支援に取り組まれ、これほどまでに大きな成果を成し遂げられたことに大きな敬意を抱くとともに、同じ人間なのになぜこんなに偉大なことができるのだろうと素朴に思いました。
そこで、私は中村さんに、どうして今のような活動をすることになったのか尋ねてみました。すると、意外な答えが返ってきたのです。
もともと中村さんは蝶が好きで、当時支援をしていた地域に近いパキスタンから医療支援の誘いがあり、珍しい蝶が見られるかもしれないと行ったのが始まりだったそうです。でも、そこで大変な状況を目の当たりにして、それから現地に関わるようになった。「神様も人使いが荒いですよね」と笑っていました。
私は、どんなに偉大な人でも、最初から偉大だったわけではない。むしろ、目の前の問題に、周りの人たちと協力しながら根気よく取り組み続け、歩みを重ねていくことが、偉大な行いとなるのだと教えられた気がしました。