出世“偉い人”の見る目がないだけなのか… Photo:PIXTA

 どう考えてもそんなに能力があると思えない人が、なぜか上司に引き立てられて出世する…という摩訶不思議な現象がある。世の中不条理なことだらけ、と言ってしまえばそれまでなのだが、どこの組織でもよく見聞きすることだろう。なぜ「上には気に入られるが、下からは支持されない」人が出てくるのか、先人の知恵を借りて考えてみたい。

 まずは、“偉い人”がどういう思いで下の者を見ているのか。「偉い人の思考」についての古典中の古典、マキアヴェリの『君主論』(池田廉訳、中公文庫)をひもといてみよう。

マキアヴェリ『君主論』に学ぶ
上に立つ者の頭脳3タイプ

 マキアヴェリによると、およそ人の頭脳というのは3種類に分けられるという。

A 自分で考えをめぐらせることができる
B 自分は考えず、他人に考えさせて良しあしを判断する
C 自分は考えず、他人にも考えさせない

 君主の能力としては、Aが最良で、Bがそれに続き、Cはだめだとマキアヴェリは言う。

 さて、この分類をもとに、それぞれの君主がどのような部下を求めるのかを考えてみる。君主の頭脳がAの場合、ここで求める人(部下)の特徴は、自分が何かを考える際に必要な(1)正しい情報をタイムリーに伝えてくれる人であり、(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人である。

 場合によっては(3)自分の意見の正しさについて(正しくない場合も含め)意見を表明してくれる人を求める場合もあるが、(3)はよほど優秀な人でなければ務まらないだろう。