まずは50のルールのうち
1つでも実践すればいい

―― 『入社1年目の教科書』50の項目がありますが、50項目すべてを身につけられない人もいるのでは? と思いました。

岩瀬 50項目すべてを実践しなくてもいいんです。人によるとは思いますけど、本1冊を読んで得られるものや身につくことは、それほど多くはないでしょう。むしろ、本1冊読んで、確実に覚えたことが何個かあって、その中の1つでも継続的に実践できればよしとする。そのくらい軽い気持ちで拾い読みしてもらえればいいと、僕は思っています。

また、『入社1年目の教科書 ワークブック』のほうでは、「初級、中級、上級」とレベル別に項目を分けています。これも、自分に必要なことだけ拾って、優先順位を決めて読んでいただければと。あいさつはきちんとする、メールの返信は早くするとか、すでにできている人はいますよね。

――「50点で構わないから早く出せ」という原則が、日本人には難易度が高いように思いました。ミスや失敗を怖がる人が多いので。

岩瀬 『入社1年目の教科書』を読んで、原則2の「50点で構わないから早く出せ」が一番記憶に残ったという人は確かに多いようです。エリートは100点主義だと思い込んでいる人や、組織風土が減点方式なので最初から50点だと後がないと思っていた人たちにとっては、特にインパクトがあったようです。

しかし、仕事は早さが大事で、人とやりとりを重ねることでより良いもの、より完成形に近いものが仕上がっていきます。もちろん、芸術家のように、最初から最後まで1人で作業して作品を仕上げる仕事は別です。その他の、自分以外の誰かと関わりながら進めていく仕事であれば、50点レベルでも「少し見ていただけますか」「この進め方で間違っていないかご確認いただけますか」といったん上司や先輩に提出して、フィードバックをもらいながら進めたほうが効率的なのです。