テレワークでOJTができなければ
“自主練”で仕事力を高めよう

―― コロナ禍の影響で、新入社員が先輩や上司とリアルで会わないままオンラインで研修を受けるケースも多いようです。社会人1年目で、いきなりテレワークというのはとても心細いと思うので、岩瀬さんの本のニーズがますます高まるかもしれません。

岩瀬 僕が新人のときは、いつも先輩や上司にくっついてOJT(On the Job Training)で仕事を覚えたので、それができない状況は本当にかわいそうだと思います。一方で、当時とは比べものにならないほどインターネットやテクノロジーが発達したことは、今の若い世代にとって大きいでしょう。

ネットは、使いようによっては多くの刺激と学びを得ることができます。せっかくそういう便利なツールがあるなら、ネットを駆使してどんどん仕事を覚えて、たくさんの情報に触れたほうがいい。特にリアルで人と会えない今は、人とのコミュニケーションもネットを活用して増やしたほうがいいと思います。

自分から声をかけるのは勇気がいるかもしれませんが、上司やトレーナー、メンターといった先輩方に、「先週の振り返りと今週の仕事について確認したいので、ネットで打ち合わせの時間を15分ほどいただけますか」などとお願いしてみるのもいいでしょう。

仕事もスポーツと同じで、たくさん本を読んだり、データを分析したり、レポートを書いたり、あらゆる経験を積まないと上手くなりません。こうした「練習」時間も含めると、仕事を身につけるには時間かかるかもしれません。しかし、最初はどうしても量が必要で、量が質を高めていくところがあります。どの世界でもプロと言われる人たちは、時間を忘れるほど夢中になって仕事を覚えた期間があるものです。

テレワークで人と会う時間が減って、OJTができない人は、書籍やネットを活用して、ぜひ“自主練”をがんばっていただきたい。そこで得たものは後の仕事に活きてきますし、何より自信を持つことができます。通勤がないため自分の時間が増えたという人も、ぜひ「自己投資」としてその時間を“自主練”に充ててみてください。

入社1年目にも再雇用者にも響く「仕事で一番大切なこと」岩瀬大輔(いわせ・だいすけ)
ライフネット生命保険株式会社創業者
1976年埼玉県生まれ。1997年司法試験合格。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン コンサルティンググループ等を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で終了(ベーカー・スカラー)。2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げ、2013年より代表取締役社長、2018年6月より取締役会長に就任。同年7月より18の国や地域に拠点を有するアジア最大手の生命保険会社であるAIAグループ(香港)に本社経営会議メンバーとして招聘される(いずれも2019年退任)。2020年よりスパイラルキャピタルのマネージングパートナーに就任、テクノロジーで業界変革や産業創出を行う企業の支援を行う。また、ベネッセホールディングス、メドレー等の社外取締役も務める。 著書は『入社1年目の教科書 ワークブック』(ダイヤモンド社)、『ハーバードMBA留学生―資本主義の士官学校にて』(日経BP社)、『生命保険のカラクリ』『がん保険のカラクリ』(共に文春新書)、『ネットで生保を売ろう!』(文藝春秋)など多数。

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