マーケットシェアが落ちてきたら「参入障壁」を疑う

土井 次に、「高い参入障壁」について伺いたいんですけど、これが崩れるときっていうのは、どんなふうにお考えですか。この会社は参入障壁が高いな、と思って投資をするんだけれども、そのあと当然推移していくじゃないですか。その辺で、どこをウォッチしているのかを聞きたいんです。

奥野 最終的な事象としては、例えばマーケットシェアが落ちてきたら疑いを持ちますね。

土井 今まで金銭的にすごい参入障壁が高かったものが、テクノロジーが安価に使えるようになったらみんなが参入できるようになるとか、そういうこともあるんですかね。

奥野 そういうことはあると思いますね。ただ、僕たちが投資している会社は、実はテクノロジーに左右されないものばかりなんです。

土井 あー、逆にね。なるほど。

奥野 僕たちの投資の中で、売却が滅多に生じないというのはそういうことなんです。でも、やっぱり追加投資をしないと崩れることってありますよね。参入障壁があるのだけれども、その状況に安住してしまって追加投資を怠っていると、フッと異業種が入ってくるケースがあるのかな。

土井 ふんふんふん、なるほどね。

奥野 例えばがんの放射線治療器のバリアンという会社がアメリカにあるんですけれども、この市場は、バリアン5割、欧州企業のエレクタ3割、残りの2割がシーメンスと、この3社で完全に寡占されている世界なんです。そこのマーケットシェアが、長期で見て、バリアンがずっと50%を維持しているという状態をチェックしていく。仮に年2%ずつ落ちていたら、何かが起こっていると判断せざるを得ない。そこが一過性なのかどうかを実際にチェックしようという話になるんです。エレクタが廉価販売したのか、もしくは、全然違うテクノロジーの治療器が生まれて、それをエレクタが開発したとか。そうだとしたら、参入障壁が崩れたと判断することになるでしょうね。

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土井英司(どい・えいじ)
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。在学中にギリシア留学。日経ホーム出版社(現・日経BP社)を経て、2000年にオンライン書店アマゾンの日本サイト立ち上げに参画。売れる本をいち早く見つける目利きと、斬新な販売手法で数々のべストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2001年、同社のカンパニーアワードを受賞。2004年有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立。数多くの著者のブランディング、プロデュースを手掛け、著者の強み(USP)の発見からブランド構築、出版戦略、マーケティングまでをトータルで行う業界屈指のプロフェッショナル。また、日本を代表するビジネス書評家として自らのメールマガジン「ビジネスブックマラソン」は2004年7月に発行開始以来、5700号を突破。読者数5万6000人を超えるメディアに成長した。著書に『「伝説の社員」になれ!』『20代で人生の年収は9割決まる』『エグゼクティブ・ダイエット』など