コロナ禍による巣ごもり需要でパナソニックの家電事業は一見好調に見える。しかし、お手頃価格で総合家電化をまい進するアイリスオーヤマと、高価格帯に特化したバルミューダやアイロボットなどの「カテゴリーキラー」に包囲され、業界におけるパナソニックの存在感は低下する一方だ。パナソニックは、ヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)などの流通改革を突破口にして家電王国の復権を果たそうとしている。『パナソニックの呪縛』(全13回)の第6回では、パナソニック家電部門の再挑戦の行方を追った。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
市況の追い風だけではない
「テレビ復活」の裏事情
久方ぶりのテレビ復権である。パナソニックは2021年3月期の決算で、長らく「構造的赤字事業」の烙印を押されていたテレビ事業が黒字化を達成したと発表した。四半期ベースでの黒字化は18年3月期以来、実に3年ぶりのことだ。
主力マーケットである国内家電市場は絶好調である。新型コロナウイルスの感染拡大による在宅時間の増加や、「1人10万円」の特別定額給付金の付与が追い風となり、大型家電や高単価商品などの需要が急増した。
とりわけテレビ市場には特別な事情も重なった。家電エコポイント制度や地上デジタル放送への完全移行が11年のこと。現在はそれから10年の買い替え需要期に相当し、販売を大きく伸ばしたのだ。
もっとも、パナソニックのテレビ事業が黒字化を達成できたのは、市況の追い風だけが要因ではなさそうだ。どういうことか。