「ヴァイツェン」ビールの文化的背景

 ところがドイツには、小麦を原料としたビールもあります。ヴァイツェンです。ヴァイツェンという名前がそもそも「小麦」という意味を持っています。特にバイエルン地方を中心にドイツ南部で飲まれているビールです。

 おわかりでしょうか? ドイツ南部は、かつての氷食地ではない地域です。

 大麦やライ麦ではなく、小麦が生産できます。ドイツ北部は氷河侵食によって痩せ地、南部は比較的豊かな土壌です。そのため北部では小麦の生産が難しく、南部では小麦の生産が古くから行われています。北部のビールは大麦が原料、南部のビールは小麦が原料となります。

 これもまた、ヴァイツェンが発明された「土台」なのですね。

 現在ではビール純粋令も改正され、基本原料に変化はありませんが、ヴァイツェンを合法的に作れるようになりました。

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宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール・地理講師
鹿児島県出身。「東大地理、センター地理」などの講座を担当する実力派。一部の講師しか担当できないオリジナル講座を任され、これらは全国の代々木ゼミナール各校舎・サテライン予備校にてサテライン放映(衛星通信を利用して配信)されている。「地理」を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。