「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!

地理は、ただの暗記科目ではありません。農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

代々木ゼミナールで「東大地理」を教えている実力派講師であり、『経済は地理から学べ!』の著者でもある、宮路秀作氏に話を聞いてみました。

先進国って、どんな国?

 先進国という言葉があります。これは一般的には先進「工業」国を意味しますが、ここではあえて、先進工業国という言葉を使います。

 先進工業国では機械類(一般機械と電気機械の合計)や自動車の生産が盛んです。これらは国内市場だけでなく、世界市場へと積極的に輸出され、輸出品目の中心を占めています。

 先進工業国の多くは、最大輸出品目が「機械類」です。しかし、スペインの最大輸出品目は「自動車」なのです。スペインの輸出品目は「1位自動車、2位機械類」となっていて、これは先進工業国の中で、スペインだけなのです。スペインの経済発展の歴史を見ていきましょう。

 安い労働力を武器に発展!

 スペインは、第二次世界大戦後、「輸入代替型工業化政策」を採用していました。

「輸入代替型工業化政策」とは、輸入している工業製品を国産化することで、自国の近代的工業化や経済発展を進めようという政策のことです。これは国内産業を育成することを目的としています。

 しかし、国民1人当たりの購買力が小さければ、市場規模には限りがあり、市場はすぐ飽和してしまいます。そのため、市場の拡大を目的に、輸出志向型工業化政策(自国に外資系企業の誘致を促し、生産および輸出を行う政策)に切り替えられます。

 スペインは1970年代半ばから輸出志向型工業化政策を採用します。さらに1986年には、ポルトガルとともにEC(ヨーロッパ共同体)に加盟することで、ヨーロッパ有数の自動車生産大国として発展しました。

 ガソリン自動車の祖といえば、ドイツベンツやダイムラーがあげられます。自動車産業は、ドイツやフランスといったヨーロッパの伝統産業なのです。

 そんなドイツやフランスに比べ、当時のスペインは、ヨーロッパにおいて比較的賃金水準が低い国でした。そのため、ドイツやフランスの自動車企業は、スペインの低賃金労働力を活用すべく、生産拠点として多くの工場を進出させます。

 結果、スペインでは部品製造業の集積も進みました。これにより外資部品メーカーによる技術供与が進み、国内製造部品の競争力が向上しました。こうした要因を背景に、スペインの自動車生産は飛躍的に発展したのです。

 しかし、思わぬライバルの出現に、スペインは方針転換を迫られます。