なぜドイツでビールが作られるのか?

 さて、ヨーロッパでは古くから豚を飼育するのが一般的でした。豚は「天然の掃除機」といわれ、基本的には何でも食べます。飼育していれば、家の周りの雑草を勝手に食べてくれます。さらに10~15頭を一度に出産しますので、人間にとって貴重なタンパク源です。

 ジャガイモを食べるには皮をむきます。デンプンを取れば粕が出ます。これらも豚が食べてくれます。寒冷で痩せ地のドイツ北部において、ジャガイモは豚のエサとしても役立ちました。

 火山灰地で痩せ地の鹿児島県や茨城県においても、サツマイモの生産が盛んで、かつ豚の飼育も盛んです。私の郷里である鹿児島の郷土料理といえば豚肉を使った料理が多く、そして芋焼酎が有名です。まさしく「芋あるところに豚あり!」なのです。

 また、ドイツ北部はかつての氷食地で寒冷な地域であるため、耐寒性の大麦やライ麦、エン麦の栽培が行われています。大麦からはビールが作られます。

 ソーセージやジャーマンポテトを食べながらビールを飲む。そういった食文化が根づいたのは、地球がドイツに与えた「土台」があったからなのですね。

 ドイツ北部は寒冷の痩せ地であるため、本来農業生産性が低い地域です。特に冬は農作物があまり取れないこともあって、食材が不足しがちでした。

 そのため保存食品の開発が進みました。肉や魚を野菜と一緒に酢などのつけ汁に浸すマリネや、キャベツの漬け物(ザワークラウト)、ソーセージなどが代表的な食品です。

 ドイツのビールといえば、「ホップ、麦芽、水、酵母だけを使用して作る」と法律で定められています。これをビール純粋令といい、成立は16世紀です。

 ただでさえ小麦の生産が困難な地域なので、食用として貴重な小麦を、ビールの原料には利用しないようにするのが目的だったといわれています。こうした伝統を守りつつ、今日のドイツ国内には醸造所が1300軒、5000種類の銘柄があるといわれています。