社長の低すぎる自己評価は、
信頼感を損ない、不安を生む
むしろ私は、自分の仕事や成果を低く見積もりすぎる「過小評価」のほうが、社長の資質としては問題だとさえ思っています。
何かにつけて「私はまだまだ」「私の経営力なんてこの程度」「いや、たまたま運がよかっただけ」。成功しても、結果を出しても、どこかで自分自身にも、自分の仕事や成果にも自信が持てない。
ましてや失敗したり成果が出なかったりしたときは、「自分には向いていない」「自分の力不足のせい」と、すべて背負い込んで落ち込んでしまう。
こうした度を越した自信のなさは、社長としてのリーダーシップや求心力、信頼感を大きく損なう恐れがあるのです。
自分を過小評価しがちな社長には、「謙虚さ」の意味を取り違えているケースが多いように思います。
社長は常に謙虚であるべきですが、とかく自己評価における「謙虚さ」の解釈には誤解が生まれがち。謙虚でいなければと思うあまり、必要以上に自分を低く評価してしまう人が多いのです。
しかし本当の謙虚さとは、「自分を過小評価すること」ではありません。
わからないことは謙虚に聞く、教えを請うという態度はとても大事です。
大事なのですが、だからといって何から何まで、
「自分はまだまだ……未熟者ですから」
「みなさんのほうがよくご存じでしょうから」
と自分を卑下してばかりでは、役員も従業員も頼りなく感じ、
「この社長、大丈夫?」「会社を任せられるのか?」と不安になってしまいます。
会社のトップである以上、社内に「この人に任せておけば大丈夫そう」「大きなことをやってくれそう」という安心感や期待感を持たせることも必要なのです。
傲慢になってもいけないけれど、不安を与えてもいけない。
社長の自己評価は、自分だけではなく、会社やそこで働く従業員の士気にまで関わってくるということです。
「やや高め」の自己評価をしつつ、一方で、常に客観的な視点で自分自身を省みる謙虚さを忘れない。そうしたバランス感覚も、社長に不可欠な資質なのです。
※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の第1回も併せてご覧いただければと思います。
(次回は、よそ者リーダーの自己評価に不可欠な「自分を知るための方法」についてお伝えします)