ある日突然、異動や転職などでリーダーを任された。
配属先は慣れ親しんだ場所ではなく、
すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)。
右も左も分からない中、
「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも
少なくありません。
また、多数のエンジニアを率いる非エンジニアの
リーダーなど、自分の専門外の領域でチームを
まとめなければならない
「門外漢のリーダー」も増えています。
今の時代、「よそ者リーダー」がリーダーの
大半であるといっても過言ではありません。
そこで、新規事業立上げ、企業再生、事業承継の
中継ぎetc.10社の経営に関わった
『「よそ者リーダー」の教科書』の著者・吉野哲氏が
「よそ者」こそ身につけたい
マネジメントや組織運営のコツについて伝授します。
今回は「非カリスマのリーダー」が磨くべき
「洞察力」についてお伝えします。
(構成/柳沢敬法、ダイヤモンド社・和田史子)

『「よそ者リーダー」の教科書』著者の吉野哲氏による「非カリスマのリーダー」が磨くべき「洞察力」とはPhoto: Adobe Stock

「よそ者」の武器となる
「人材洞察力」を鍛え抜く

私はMBAをはじめとする高度な経営手法を学んできたわけでも、ひとつの会社や分野で長年培った専門的なノウハウを持っているわけでも、ましてやカリスマ的な才覚があるわけでもありません。

そんな“凡人”の私がビジネスの世界で生きるために重要視し、意識して鍛えてきたスキルが「洞察力」です。

ここで言う「洞察力」とは、周囲をよく見ることだけではありません。

会社組織の状況やそこに関わる人材、その会社を取り巻く外的環境の変化などを分析・検証し、経営判断を下す力のこと。

・会社の行き先を定めるために、時代を読む
・会社に関わる「人材」の資質や能力、可能性を見抜き、登用する
・市場の変化を見極めて次のマーケティング戦略を立案する
・財務諸表や数値から、その奥にある課題を見つけ出す
・自分なりの仮説を立てて、実行(検証)する

こうしたスキルは高度な教育や専門的な知識だけでなく、自らの問題意識の持ち方や好奇心の強さによっても養われ、磨かれていくものです。

例えば、街中にある当たり前のものでも

「どうしてこうなっているんだろう?」
「どんな影響があるんだろう?」

といった問題意識を持った目で見る。

世の中の流行に興味を持ち、その背景や要因、ムーブメントなどを自分なりに推測してみる。

経営や事業のことだけでなく、美・知・食・音楽など幅広い分野に関心を持ち、常に好奇心を磨く――。

言うほど大げさなことではありません。普段から「感性と好奇心のアンテナ拡張」と「論理的な分析・検証」を意識することで洞察力は育まれていくのです。

私は子どもの頃、父の仕事の関係で幼稚園を3回、小学校を3回、中学校を2回変わっています。

幸い行く先々でクラスに馴染めて気の合う友だちもでき、楽しく過ごすことができました。

ただ、今思えば、新しい転校先では子どもながらに「今度の学校は、クラスは、どんな雰囲気なのか」、「クラスメートはどんな子たちなのか」を必死に観察していたのでしょう。

どうすれば新しい学校(環境)に適応できるか。その「問題解決」のために自分なりに観察・分析して、「この子とは仲良くできそうだな」といった仮説を立てて行動していたのです。

そうした経験もまた、私の「洞察力」の土台になっているのかもしれません。

社長にとって、「洞察力」は会社経営のさまざまな場面で必要とされる、非常に重要度の高いスキルであり、強力な「武器」でもあります。

なかでも「人材洞察力=人を見る目」は、会社経営の原動力となる人材登用や経営課題の解決に不可欠なもの。

カリスマではない“凡人社長”や新天地に赴任する“よそ者社長”はもちろん、組織を率いるすべてのリーダーには、常日頃から意識してこの「洞察力」、とくに「人材洞察力」を磨いていただきたいと思います。

※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の第1回も併せてご覧いただければと思います。

次回は、「よそ者リーダー」の「人事情報との向き合い方」についてお伝えします)