ある日突然、異動や転職などでリーダーを任された。
配属先は慣れ親しんだ場所ではなく、
すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)。
右も左も分からない中、
「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも
少なくありません。
また、多数のエンジニアを率いる非エンジニアの
リーダーなど、自分の専門外の領域でチームを
まとめなければならない
「門外漢のリーダー」も増えています。
今の時代、「よそ者リーダー」がリーダーの
大半であるといっても過言ではありません。
そこで、新規事業立上げ、企業再生、事業承継の
中継ぎetc.10社の経営に関わった
『「よそ者リーダー」の教科書』の著者・吉野哲氏が
「よそ者」こそ身につけたい
マネジメントや組織運営のコツについて伝授します。
今回は、メンバーの資質や本音がわかる
「1つの質問」についてお伝えします。
(構成/柳沢敬法、ダイヤモンド社・和田史子)

『「よそ者リーダー」の教科書』著者の吉野哲氏による、メンバーの本音を引き出す質問とはPhoto: Adobe Stock

「10年後の自分」に見える
会社や仕事へのスタンス

外部からやってきて会社を任された“よそ者社長”にとって、着任先の従業員の資質を把握することは非常に重要な“仕事”のひとつ。

そのためには、「全従業員との面談」を行うのが望ましいということは、前回の記事でもお伝えしました。

今回は、私がこれまでの経験から学んだ、面談や普段のコミュニケーションにおける「従業員の資質を知るポイント」のひとつをお伝えしましょう。

それは、「その人の、会社における望み」を聞き出すことです。

その人が会社で実現したいことは何か。
何に高い満足感を覚えているのか。

そうした、その人が会社に求めている「ベネフィット(やりがいや満足感)」をくみ取ることが大切になります。

例えば、具体的には次のようなものが挙げられます。

・入社したからには、少しでも上を目指して出世したい
・出世するよりも、高い収入を得たい
・出世や高い収入は求めていないが、長く安心して働きたい
・将来、転職や独立を考えていて、そのために実績を上げて自分の価値を高めたい
・この会社が好きで、この会社で働くことに喜びを感じている
・この会社というよりはこの仕事が好きで、ずっと打ち込みたい
・ここで働く仲間が好きだから、この会社で働いている
・他者評価を重要視して、周囲から「いい人」と思われたい

とはいえ、社長に面と向かって「将来的には転職したい」「よそより給料がいいから働いている」「独立を視野に入れて仕事をがんばっている」などと正直に言ってくる人は、そうそういないはず。

だからこそ、こちらが「この人は、そういう気持ちを抱えているんだろうな」という、本音のところを洞察し、探り取る必要があるのです。

ただ、人の「言外の本心」を探るのはなかなか難しいもの。そこで、私が従業員との面談でいつも使っている“1つの質問”があります。それは、

「10年後、あなたはどうなっていたいですか?」

この質問をすると、
出世したい人なら、「こういう役職に就いていたい」
転職を見据えて自分の価値を上げたい人なら、「こんなスキルを身につけたい」
今の仕事を淡々と続けたいという人なら、「今とあまり変わらなくていい」

といった答えが返ってきます。

「10年後の自分」という具体性を持った質問への答えに、漠然とではあっても、その人の仕事や会社へのスタンスをうかがい知るためのヒントがあるのです。

会社経営を任されているみなさん。従業員とコミュニケーションを図る際には、ぜひとも「10年後の自分のなりたい姿」を聞いてみてください。

その人が「会社や仕事でいちばん大事にしていること」を把握することは、会社経営における人材マネジメントに大いに役立つはずです。

※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の第1回も併せてご覧いただければと思います。

次回は、人材洞察力を高めるために「してはいけないこと」についてお伝えします)