4月20日、長崎県諫早市の半導体工場の増設で挨拶するソニーグループの吉田憲一郎社長4月20日、長崎県諫早市の半導体工場の増設で挨拶するソニーグループの吉田憲一郎社長 写真提供:ソニーグループ

米中対立の余波で打撃を受けたソニーグループの半導体事業が巻き返しの動きを見せている。中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)への供給が一時途絶えて苦戦したが、米アップル「iPhone12」の上位機種へのセンサーの大量供給で復活を果たしつつある。2021年秋に発売になる次期iPhoneへのセンサー出荷も一段と拡大しそうで、ソニーの半導体に追い風が吹く。ファーウェイの“穴”をアップルの出荷で埋める戦略が鮮明だ。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

苦戦する半導体が復活の兆し
ソニー副社長が強気の発言

「2020年度はもともと計画していた投資を先送りしたが、21年度は数量シェアの回復のめどが付きつつあるので、能力増強投資の準備を進めている」

 ソニーグループが4月28日に行った21年3月期の連結決算発表のオンライン会見で、十時裕樹副社長兼最高財務責任者(CFO)は、米中対立の影響で打撃を受けた半導体事業について巻き返しの意向を示した。

 同日発表した連結業績は、最終利益が前年同期比2倍の1兆1718億円となり、1946年の創業以来初めてとなる1兆円の大台を突破。2年ぶりに過去最高益を更新した。

 けん引したのは、新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要で好調なゲーム事業だ。一方、もう一つのソニーの主力である半導体事業については、米中対立の激化で中国・華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン向け画像センサーの供給が激減して減収減益となり苦戦しているように見える。

 だが実は、その中身を詳細に見ると、ファーウェイ向けの打撃は和らぎ、半導体復活の兆しが見えつつある。