高まる中国アレルギー、「のんびり日本」がビジネスチャンスを逃す理由日中経済協会専務理事・杉田定大氏

さかのぼること2018年秋、日中首脳会談で両国は「競争から協調へ」と新たな時代のパートナーシップを確認し合った。あれからわずか2年半、コロナ禍において日中関係はまたしても視界不良の霧に覆われている。日中経済協会は日本と中国が国交を結んだ1972年に発足し、その後長年にわたり日本企業の対中ビジネスを支援してきた。米中対立に影響され日中関係も大きく変化する中、同協会専務理事の杉田定大氏は「ビジネスチャンスを逃さないでほしい」と話す。(聞き手/ジャーナリスト 姫田小夏)

日本全体で高まる「中国アレルギー」
大きなビジネスを逃す恐れ

――改善に向かい始めた日中関係も振り出しに戻りました。

杉田定大氏(以下、杉田) 2018年秋、日中関係が改善に向かう局面において、私ども日中経済協会も訪中しました。天安門広場には日本の日の丸と中国の五星紅旗(ごせいこうき)がはためき、ようやくここまで戻ってきたか、という気持ちでした。私は2016年に日中経済協会に着任し、北京との往来を繰り返しましたが、当時中国政府側は「米国は日本よりもいい国だ」とさえ言っており、それがこのような変局を迎えるとは夢にも思いませんでした。

 転換点は、中国による香港への政治介入です。国家安全維持法の制定を契機に中国に対する国際社会の見方が変わりました。

――日本全体で“中国アレルギー”が高まっています。

杉田 2020年1月まで日本はインバウンドが盛り上がっていて、多くの中国人観光客が訪れ、その恩恵を身近に感じていた企業も少なくありませんでした。しかし、今では訪日観光客も姿を消し、テレビでは米中新冷戦の経済安全保障などを取り上げる中国専門家の発言の機会が多くなっている状況です。

 企業活動で言えば、中国企業を納入先とする取引も大きく後退しました。米商務省が国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業を列挙した「エンティティーリスト」には、ファーウェイおよび68の関連会社なども連なっていて、掲載された企業と米国企業が取引をする際には政府の許可が必要となります。しかし実際のところ、米国企業はファーウェイに車載部品を入れています。もっともそれはローエンドのもので、米国の規制に抵触しないものではありますが。

 また、再輸出規制の「25%ルール」(米国原産品目の組み込み比率が25%を超える場合、再輸出に政府の許可が必要)でも全部禁止されているわけではありません。機微技術に関わらないようにどうやってビジネスをやっていくのか、そのかじ取りが求められています。

<プロフィール>
日中経済協会専務理事・杉田定大(すぎた さだひろ)氏
1955年、京都に生まれる。経済産業省中国経済産業局長や経済産業省大臣官房審議官、早稲田大学客員教授を歴任。2016年から東京工業大学特任教授、日中経済協会専務理事に就任。