また、中国の山西省から来日した張さん(仮名)は現在、都内のコンビニエンスストアでアルバイトをしているが、「日本語の正しい使い方」に頭を悩ませている。

「『ありがとうございます』と『ありがとうございました』ではどう違いますか? 支払いを済ませたお客さんに『ありがとうございます』と言うのは間違いなのでしょうか」

 これは張さんが筆者に持ち掛けてきた相談だが、同時に張さんを落ち込ませていたのは、このささいな違いについての質問を、先輩店員から「マニュアルに従えばいいんです」と問答無用で却下されたことだった。

外国人材の声が届かない

 少子高齢化による人口減少で、日本は海外からの人材に労働力を依存せざるを得ない事態に直面している。しかし、外国人材にとって日本の労働環境における「理想と現実のギャップ」はあまりに大きい。

 地方都市では、金銭面での待遇の悪さなどを理由に技能実習生の失踪事件が繰り返されてきたことは既報のとおりだが、一方、都心の職場で浮き彫りになるのは外国人材が神経をすり減らして働く姿だ。金銭面の待遇の悪さというよりも、「ささいなことで叱責を受ける」という精神的苦痛が、都心部の外国人材に共通する悩みのようだ。

 外国人材の労働環境に詳しいJOINT ASIA(横浜市)代表取締役の杉本希世志氏は、「外国人材のささいなミスに目くじらを立てる傾向は否めません。これほど外国人材と接する機会が増えているにもかかわらず、受け入れ側である現場の意識は変わっていないのです」と話す。

 中国人留学生の李さん(仮名)は、都内のアミューズメント施設でアルバイトをしているが、「職場にはいじめがある」とSNSで筆者に打ち明けてきた。

「職場には、日本人による深刻ないじめがあります。『何を言っているかわからない』『もっと日本語を勉強しろ』『中国人は嫌いだ』などと、何度言われたかわかりません。中国のネガティブなニュースを話題に挙げて、その国の人を悪く言う風潮があります」