「まずまずの結果」で満足しない
何事もそうですが、最初にある切り口で物事を分けてみて、そこそこの結果が出るとそこで分析をやめる人は少なくありません。冒頭のコミックの例も、上司に指摘されなければそのまま最初の分析でやめてしまったかもしれません。
たとえば、10の大きさの問題があったとして、ある切り口で分析したところ、それが「1:8:1」の比率で分解できたとします。多くの人は、この切り方に満足し、その「8」の部分にフォーカスして問題解決を進めるでしょう。もちろん、それが有効なこともあるのですが、必ずしもそういうケースばかりではありません。別の切り口で切れば、「0.5:9:0.5」の結果が見えてくるかもしれません。もしそうであれば、後者の切り口の方がより問題の核心に迫れているといえます。
ある会社の社員の不満足度を調べた結果、年収800万円から1000万円の層に大きな不満があったとします。この層に対して手当を厚くしたりという方策も考えられますが、本当にそれは有効なのでしょうか?
別の切り口として、「子どもが2人以上私立の学校に通っている」「親の介護をしている」という「悩み別」で調べたら、この2つの原因で90%を占めていた、という可能性もあるのです。子どもが2人私立学校に通っている、あるいは親の介護をしているというのは、通常はそこそこ年齢のいったシニア社員ということが多いでしょう。企業にもよりますが、年齢は往々にして年収とある程度相関する傾向があります。結果として、たまたまこの2つの問題で悩んでいる人々が、年収800万円から1000万円の層と重なったという見方ができます。
こうした現象を疑似相関といいます。疑似相関の有名な例は、ビールの消費量が多い月は水難事故が多いというものです。これは別に、ビールを飲んで酔っ払って水難事故にあったというわけではありません。ビールが売れるのは通常は暑い季節です。暑い季節は当然、海や川に出掛ける人も増え、それゆえ水難事故が増えているだけなのです。
この程度であればさすがに気づく人が多いと思いますが、実際のビジネスでは先述のような、意外に見逃しがちな疑似相関は少なくないのです。
自分のピントが合っていれば
より実態に迫れる
その他にも、1つの切り口ではぼんやりとしか見えてこなかったことが、2つの切り口の掛け算でクリアに見えてくるということも少なくありません。あまり時間をかけすぎるのは好ましくありませんが、「こういう切り口で切ってみたらより実態に迫れるのではないか」という仮説を持ち、試してみることも大切です。そしてそのためには空理空論で仮説を立てるのではなく、現場の声を聞いたり、自分が現場に赴くなどして、現場の肌感覚を持つことも大切です。
たとえば、「このサービスはどうもIT業界で働いているビジネスパーソンからの評判が良くない感じがするんですよ」という現場の声があったとします。であれば、職業別に満足度を調べてみて実態をあぶりだすことがまずは有効かもしれません。そのうえで原因を解消できれば、満足度は全体的に向上する可能性があるのです。
問題の核心に迫り、効果的な打ち手につなげる
①多様な切り口を持ち、短時間で実態に迫る
②切り方を工夫する
③「そこそこ」で妥協せず、より実態に迫る分解をする
☆マンガでわかる「分けて考えるコツ」はこちら
(本記事は『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』〔グロービス著、嶋田毅 執筆〕の抜粋です)