取得価格を有利に交渉してみよう

 売主側仲介業者は解体費用を約2000万円で見込んでいるため、そもそもの更地渡しであれば2000万円程度の価格の弾力性があることを暗に告白してしまっている。だから価格が2000万円割り引かれての購入が叶った。

 また、この良質でしっかりとした構造の建物の骨格自体をゼロ円で取得できてしまう。これに内装解体、設備再施工、内装などの金額が確かにかなり必要だが、それをもってしても有り余るアルファだろう。

 そして将来的には周辺の土地を取得できる可能性もある。ここでも容積率がまだ余っており、4階程度の建物が新築可能となるため、将来使えるアルファを貯金として持っていることになる。

 貯金といったのは、将来的にこちらの土地を近隣の再開発希望業者に容積率の貯金を持ったまま売ることもできるからだ。

 もし、あなたがこの南青山の物件を相続するとしたら、売り払って現金化する以外に、どんなアルファが考えられるのか、逆説的にいろいろとアイデアが浮かぶのではないだろうか?

・建物価値はほぼゼロなので建物分の相続税を払う必要はない。
・住宅特例で土地分の相続税は圧縮できる。
・リノベーション費用を先代が拠出することにより資産圧縮が可能。または、内装などの減価償却は年限が早いため、大きな減価償却による節税が可能
・コンバージョン(用途転用)により固定資産税と年間維持費が出続ける負の遺産から、キャッシュフローを生んでくれる物件に早変わり
・土地担保評価が高い場合は相続税も大きいが、非常に有利な条件でリフォームローンが組める
・何より先代が大切にしてきた土地を活かしながら、物件に新たな息吹を吹き込める

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。