黒板とノートの代わりに
「プレゼンテーション・アプリ」

 パソコンやデバイスを通じて、イギリスの先生が子どもたちと膝を突き合わせるために使っていたのは…?

 なんとビジネス現場でよく使われるプレゼンテーションアプリでした!

 プレゼンテーションというと、「話し手」が「聞き手」へ向けて一方通行的に活用するイメージが強いですが、そこでは教師と生徒との双方向的コミュニケーションツールとして使っていました。

 Google を導入しているその学校では「Google スライド」というアプリを使っていました。

「Google スライド」は、マイクロソフト社のPowerPointと同じ機能を持つ無料アプリです。

 さらに「ウェブ検索」からそのまま画像や動画を埋め込んだり、関連サイトへのリンクを追加したりするなど、マルチメディアでの活用ができます。

 では、具体的に授業ではどんなふうに活用していたのでしょう?

 そこでは、従来の日本の教育現場のように先生が一方的に話す光景はありません。

 先生は、プレゼンアプリ上で「問い」を出し、子どもたちがそのアプリ上で、自分たちの「答え」を出し合う光景でした。

【9割の人が知らないデジタル教育現場】イギリスの学校で「黒板とノート」の代わりにめちゃくちゃ活用されている「無料アプリ」とは?先生はアプリ上で「問い」を立て、子どもたちが「答え」を出し合う

 もう少し詳しく現場の模様をご紹介しましょう。

 先生は、黒板の代わりに、大型提示装置の大きな画面にスライドを映し、授業を開始。

 スライドには、「今日、習得すべき知識」と「今日の活動の指示」が「問い」とともに提示されています。

 子どもたちは、大型提示装置の画面を見ながら、クラスの全員が参加して、口々に意見を言い合います。

 先生からの「さあ、それぞれの答えを書いて」の合図をもとに、子どもたちは自分のパソコンにカタカタと指を動かします。

 スライドに書かれた問いに対して「自分が考えたこと」をスライドの空欄にどんどん入力しているのです。

 パソコンはもちろん Google のChromebook。

【9割の人が知らないデジタル教育現場】イギリスの学校で「黒板とノート」の代わりにめちゃくちゃ活用されている「無料アプリ」とは?「正しい? 間違い?」中央のテキストボックスを左右に移動させるアクティビティ

 そのプレゼンアプリは、クラウド上に置かれているので、先生と子どもたちはそれぞれ自分の端末からリアルタイムで同じファイルを見たり書き込んだりできているのです。

 そこにはICT(情報通信技術)をうまく活用することで、子どもたちを学びの主役にできている教室の姿がありました。

 先生や子どもたちは、どんな好影響があるのでしょうか?

 先生も子どもたちも板書をしたり、それを写したりする手間が一切ありません。

 子どもたちは手元の端末で、検索しながら調べ物をしたり、文字を見やすいように大きく拡大したり、最初に説明されたことをもう一度戻って確認したりすることができます。

 つまり、今まで「先生が話すことを聞き逃さない」「黒板の文字が消される前に書き留める」ことに神経をすり減らしていた子どもたちは、「課題を自分の頭で考えること」だけに全集中できるようになるのです。

 一方、先生も子どもたち一人ひとりの課題進捗状況を自席からでもリアルタイムで確認できます。効率よく全員の子どもたちの様子をつかむことができるのです。苦戦している子どもをデジタルで発見し、アナログで声をかけることもできます。

 もう一つのメリットが、先生たちの授業準備負担が大幅に減ったことです。

 デジタルなら一度作った授業コンテンツを何度でも使い回せます。他のクラスにもワンクリックで使えますし、翌年にも再利用できます。

 そして、なによりも目の前の子どもたちに理解度に合わせて、簡単に加筆修正ができます。

 先生方の働き方改革にも効果あり、というスグレモノでした。

 ブリタニアヴィレッジ小学校でICT教育を担当するルーク先生はこう語りました。

【9割の人が知らないデジタル教育現場】イギリスの学校で「黒板とノート」の代わりにめちゃくちゃ活用されている「無料アプリ」とは?Google 導入経緯について熱く語るイギリスのルーク先生

子どもたちは、コンピュータをクリックするとヒントがもらえることを知っています。

 子どもの授業出席率は96%です。

 テクノロジーの導入で、子どもたちは、訪問者に対して自信を持って話ができるようになりました。自分たちの勉強していることをいろいろな人と共有することが嬉しいと感じているのです。」

 すでにイギリスでは驚くほど簡単かつ無料「ティーチャー」から「ファシリテーター」へ華麗なる変身を遂げていたのです。