その理由を説明する前に、そもそも、「紅色旅游」はどのようなものかについて、少し説明しておこう。

 中国で「紅色旅游」が正式決定したのは2004年。胡錦濤政権時代に提唱されたことがきっかけだった。目的は「革命伝統教育を強化し、人民の愛国心を高め、民族的な精神を育むこと。聖地の経済・社会の発展を加速すること」だ。

「紅色」(赤色)は中国共産党のシンボルカラー。そのため、中国共産党の「革命の地」を旅行することを「紅色旅游」と呼ぶ。2016年には特設サイトが開設され、全国300カ所に及ぶ紅色旅游地リストが発表された。

「革命の聖地」とされるのは、前述した江西省井岡山市のほか、主に以下がある。

・党が「中華ソビエト共和国」臨時政府を置いた江西省瑞金市
・毛沢東が党の実権を握った会議が行われた貴州省遵義市
・「長征」(軍の大移動)の後、新たな革命の拠点とした陝西省延安市
・党中央委員会が一時的に置かれた河北省石家荘市西柏坡

 これらの場所に記念館や博物館などを建設し、そこで専門ガイドによる解説を聞いて、中国共産党が歩んだ歴史を学習したり、周辺を見学したりする。以前は土産物屋などが並んでいることもあったが、習近平氏が国家主席に就任後、金もうけ主義に走る風潮にクギを刺したことを機に、「まじめな学習の場」としての色合いが濃くなったといわれている。

 ほかに「紅色旅游スポット」と呼ばれるところも各地に点在している。たとえば、北京市にある「中国人民革命軍事博物館」、上海市にある「中国共産党第一次全国代表大会会址(通称・一大会址)」、南京市の「南京大虐殺遭難同胞紀念館」、湖南省の「毛沢東故居紀念館」などだ。これらの場所は「紅色旅游スポット」となる以前から一般の人々に知られる有名な観光地だったが、「紅色旅游」に指定されて以降、観光客が増えたところが多い。

中国共産党でも
“若返り”が進む

「紅色旅游」が始まった2004年にこれらの場所を訪れた観光客はのべ約1億4000万人だったが、2019年にはのべ約14億人にまで増加。2019年の同旅游関連の収益は約4000億元(約6兆円)にも上っており、当初の目的通り、「革命の聖地」の経済・社会の発展に、観光という側面から大きく貢献していることがわかる。