HSS型HSPは、人間関係の悩みを自分で複雑にしていると感じつつも、悩みの悪循環から抜けられなくなってしまいます。ひどくなると、休職に及んだり、逃げるように転職したりするケースも珍しくありません。

悲しいことに、そのような状況になっても、見かけ上のポジティブさゆえに、胸に秘めていたストレスや、退職に至るまでの苦痛を周りにわかってもらえないことがほとんどです。

イラスト©村山宇希

傷つきやすく見えない人ゆえの悪循環

前述したように、私もHSS型HSPです。私自身、すごく悩んでいたのに、周りにまったくわかってもらえずに苦しんだ時期がありました。

それは20代の頃、シリコンバレーに拠点を置くスタートアップに転職を果たしたときのことです。

世界で最先端をいくIT企業で働くチャンスを得た私の好奇心は最高潮に達し、家族とともにキャリアアップを喜んでいました。

ところが転職して早々に、私は世界トップクラスの先端的企業の技術力の高さとスピードに完全に圧倒され、身動きできなくなってしまいました。終わらない仕事に徹夜が続くようになり、寝袋を持ちこんでオフィスの床で仮眠をとっては多量のコーヒーを飲んで気力を振り絞る日々を繰り返すようになったのです。

前職でもハードワークをこなし、最先端の技術が理解でき、人と話すのも好きで、営業にも出ることができる人材として評価されての転職でした。上司の右腕候補として入社したプライドもありました。それなのに、入社1ヵ月ほどで私はすっかり自信喪失し、ポンコツ状態に……。上司の指導に対しても、自分に何ができて何ができないのか答えることすらできなくなってしまったのです。

上司は入社前後で私がまったく違う人間になってしまったと失望し、私自身も自分がなぜこうなってしまったのか、当時はまったくわかりませんでした。

このように、傷つきやすくは見えない人が、本当は環境の変化や作業量にのまれているのに、周囲にそれを見せないよう抑えこむのはよくあることです。

一見、変わらぬペースで仕事をがんばり続けるため、周囲になかなか気づいてもらえず、できない自分に傷ついてしまいます。