そんな中、今後のビジネスチャンスのヒントとなる“方針”が、先日政府から打ち出された。中国政府は「第14次5カ年計画(2021~2025年)民政事業発展計画」の発表会で、これまで目標としていた「1000人の高齢者に35ベッド」の指標を取り消し、代わりに介護用のベッド数の割合を上げる指標に切り替えたのだ。そのほか、中間層が入りやすい施設の普及、真のニーズに合ったサービスの提供、最後まで尊厳のある人生を送れる社会環境の構築なども表明された。これまでベッド数という量を追求してきたが、今後は「量」より「質」を重視する政策へと、風向きが変わるといえる。

 莫大な高齢者人口を抱える中国。高齢者のうち、認知症の人は1507万人、要介護者は4000万人に上る。そして、1962~63年のベビーブームで生まれた世代が膨大な高齢者予備軍として待ち構えており、2030年には高齢者数は3.6億人になると予測されている。

 隣国で発展するこのような巨大な介護市場に対して、日本はどんなことができるのか。

 政策の転換をチャンスに、日本が先行している「尊厳のある老後」や「QOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質)重視」を意識したサービスなど、質の部分で商機をつかむことが期待されるだろう。

 現に、日本の「認知症グループホーム」や「訪問入浴」などは中国で大きな話題となり、実践され、浸透しつつある。また、日本で介護を学んだ人が帰国後、起業したり、就職したりして、介護業界で大活躍するケースも少なくない。何よりも、現在の中国の介護業界は、欧米の国々より日本を一番参考にしており、「日本はこうだから間違いないだろう」という空気があると筆者は感じる。だからこそ、日本の事業者には、ぜひこの大チャンスをうまく生かしてほしいと思う。