巷は第2次マラソンブームらしい。第1次は遡ること30年、1979年に開催された第1回東京国際女子マラソンの頃という。同大会の影響や生活習慣病の予防に最適という気運に押され、市民ランナーが急増した。そして第2次は、ホノルルマラソンや2007年に始まった東京マラソンが火をつけた。
先ごろ発表された第6回東京マラソンの応募総数は、「そろそろ頭打ちでは」との下馬評を覆し、過去最大の30万3450人、倍率も10.3倍となった。そのほか、第2回大阪マラソンも応募総数15万5482人、倍率5.2倍。第2回神戸マラソンも7万5173人、4.2倍などいずれも盛況。その他地方都市の大会にも、参加者が押し寄せている。
日本では毎年1500の大会が開かれ、ランニング人口は2010年時点で推定883万人(笹川スポーツ財団調べ)。同人口は年率10%くらいで増えていることから、2012年現在は1000万人を超えていると見られる。日本はまさに市民ランナー王国、市民マラソン王国となっているのだ。
背景にはもちろん健康志向の高まりがある。長引く不況の中、安く、手軽に始められることも挙げられる。老若男女を問わず、おひとりさまでも、仲間(コミュニティ)でも参加できる懐の深さもある。ランナー同士でSNSなどを通じて励まし合ったり、競い合ったりできる側面もある。何でもファッション化する「ガール現象」も一枚噛んでいる。いわば、今の世相にとって理想的なコンテンツであり、まさに時代の申し子であることは間違いない。
ブームが成熟してくると、派生形が生まれてくるのが世の常だ。マラソンブームで言えば、典型的な例が「ランツーリズム」であろう。ご当地の名物を飲んだり、食べたり、あるいは名所を見ながら走る「観光ラン」だ。
国内で有名なものは、全国各地で開催されている「スイーツマラソン」。給水地点などにご当地スイーツが用意される世にも珍しい大会だ。これは食べ歩きならぬ、「食べ走り」である。