ESG投資を標榜する運用会社は
東芝と三菱電機の株式をどうする?

 ところで、昨今熱心にセールスされている、「ESG(環境、社会、ガバナンス)」に配慮している企業への投資を提唱する「ESG投資」では、東芝や三菱電機の株式に対してどう対処するのだろうか。

「ESG」の「G」は、ガバナンスの「G」なので、株主に対する背信行為があった両社の株式を、ESG投資を標榜する運用会社が持ち続けるのだとすると、「ESG投資」はほとんどお笑い草だ。

 しかし、東芝も三菱電機も企業倫理的に「悪い」のだとしても(再々、申し訳ない)、その株式が現在の株価で投資対象としていいのか悪いのかは判然としない。

 こうした具体的な対象に対する投資行動を考えると、資産運用手法としての「ESG投資」のばかばかしさがよく分かる。

日立・東芝・三菱電機の重電3社
さてどれに投資する?

 東芝と三菱電機に日立製作所を加えて、重電3社と呼ぶことがある。証券取引コードでは、6501(日立)、6502(東芝)、6503(三菱電機)だ。各社いずれも、インフラなどに関わる「重電」だけをビジネスとしていたわけではないが、比較の対象になりやすいライバル会社3社だ。

 最後に、筆者の新米ファンドマネージャー時代の思い出話を紹介しよう。

 ある運用会社で、アナリスト部門の役員が、若手ファンドマネージャー数人に、「重電大手の銘柄には、日立、東芝、三菱電機の三つがあるけれど、君たちは、それぞれどんな根拠でどの銘柄を買いたい(=保有したい)と思う?」と問いかけた。

 読者なら、どのように考えるだろうか。

 ちなみに、過去10年くらいの株価の推移を見ると、日立は相当に上昇していて現状は最高値圏、東芝は上下の動きの幅が大きいが過去10年では高値圏。一方、三菱電機は2018年が高値で現在の株価はそれよりもかなり低い。

 問いかけられた若手ファンドマネージャーたちは、それぞれの企業のビジネスや株価に対する評価を述べて、自分が最も買いたいと思う銘柄を述べた。一方、生意気な若手だった筆者は次のように答えた。「私にも、あなた(調査担当の役員のことだ)にも、企業の評価なんてできないし、われわれに特別な情報はないのだから、3銘柄全部に分散投資するといいのではないですか」。

 金融論的には今でも「群を抜いた正解!」だと思うのだが、サラリーマンとしてはダメな答えだった。

 以上、何を教訓とするかは、読者にお任せする。