また、三菱電機の企業体質を考えた場合に、製品検査の意図的不正に類する問題が、鉄道関連の機器にとどまるのかどうかが外部からは分からない。

「東芝型」の不祥事だと、「株価が〇〇〇〇円以下に下がれば投資チャンスではないか」と判断しやすい面があるが、顧客に対する背信を伴う「三菱電機型」の不祥事の場合「××××円まで下がれば買いだろう」という判断が下しにくいのだ。

新格言「株は悪材料こそが買い」を
提案したいとはいうものの…

 株式投資にあっては、不祥事や不測の大型損失、事故などの「悪材料」の発生が、実は投資の好機になる場合が少なくない。株式投資の新しい格言として、「株は悪材料こそが買い」を提案したいくらいのものだ。

 投資家にとって「悪材料」のいいところは、しばしばそのスケールを評価することが容易な点だ。「工場が被災」とか「投資の巨額損失」「会計のごまかし」のような悪材料は、「企業価値にとって最大この程度の下方修正要因だ」ということを把握しやすい場合がある。そのスケールをはるかに超えて株価が下がった場合、投資家はひっそりと仕込む(株式を買う)といい。

 他方、「新製品の売り上げが好調」のような好材料では、今後どの程度の売り上げが期待できるのかはスケールを評価しにくいので、実は投資評価が難しい。

 さて、今回の三菱電機の場合はどうなのだろうか。

 実は、今回のケースでは、三菱電機が今後負担しなければならない不正のコストがはっきりしない。その点で、典型的な「株は悪材料が買い」の手法で「株価が××××円以下ならチャンスではないか」という判断を下しにくい。

 では、三菱電機に投資するのはダメなのかというと、そうでもない点が難しい。株式市場の参加者は、その時々の情報を加味しながら三菱電機の株式の価値を評価しているはずであり、それが過小とも過大とも決めつけにくい。