ヒカリはとなりのシフト表に目を移した。
平日のアルバイトの数はホールが10人、キッチンが6人になっていた。いままではホールが12人、キッチンが8人だったから、それぞれ2人ずつ減らしたことになる。
土日は人数が減っただけではなかった。ホール担当のほとんどが大学生から高校生に変わっていた。時給はもともと大学生・パートが1100円(早朝・深夜勤務は1250円)、高校生が900円で200円の差がある。あの手この手で、人件費減らしを目論んでいるようだ。
ヒカリは携帯電話を取り出し、今回のリストラ効果をざっと計算してみた。
1日あたりの作業時間の合計は、ホールが58時間から45時間、キッチンが42時間から30時間になり、合計で25時間減り100時間が75時間になった。
クビになったのは、時給の高い大学生とパートだから、これでアルバイト代は月間で約82万円の減額だ(1100円×25時間×30日=82・5万円。これに早朝・深夜勤務分が加算される)。
さらに、残ったアルバイトの時給を一律50円引き下げるから、1日の作業時間の合計75時間をかけて、1日3750円、1カ月で約11万円以上の節約だ。
以上を合わせると、1カ月で約93万円の人件費が削減される。
ヒカリが見た3月の赤字(貢献利益のマイナス分)は182万円だったから、売上が同じなら、赤字は半分近くになる。
アルバイト削減のリストラ効果で赤字削減か――。猪木の思惑が透けて見えてきた。