「では君に、もう一つ質問しよう。君は、このトリュフを高いと思うかね」

「そうは思いません」

「なぜだろう?」

 この店は有楽町の一等地にあって、店の内装は豪華そのものだ。店員の教育も行き届いている。味も形も申し分ない。たくさん食べるわけではないし、毎日食べるのでもない。

「そうですね。たしかに安くはありません。でも満足感があります」

 と、ヒカリが答えた。

「そういうことなんだ。君はこのトリュフに400円以上の価値を見出した。だから、喜んでお金と交換するんだよ。たとえば、トリュフの材料費が100円だとする。売値400円から材料費100円を差し引いた差額300円が限界利益だ。この300円こそ、会社が生み出した価値の大きさなんだよ」

 ヒカリはやっとわかった気がした。

 100円で仕入れた材料を400円で売れる商品に仕上げたのは、このお店だ。限界利益とは、会社が生み出した付加価値そのものなのだ。

「利益の謎が解けてきたようだね。だが、これは答えの一つにすぎない」