転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビジョナル創業者の南壮一郎氏は、ヤフーを傘下に持つZホールディングス社長の川邊健太郎氏とタッグを組み、合併事業会社「スタンバイ」を手掛けています。実は川邊社長は、意外な形でビズリーチ創業のきっかけをつくっていました。(聞き手は蛯谷敏)

ビズリーチ創業のきっかけをつくった、ヤフー川邊健太郎社長のある勉強会Zホールディングス社長の川邊健太郎氏

――ビジョナル創業者、南壮一郎さんとの出会いについて教えてください。

川邊健太郎氏(以下、川邊):南さんと初めて会ったのは福岡なんです。

 2004年にプロ野球の再編があって、紆余曲折を経て、2005年に楽天とソフトバンクが新たに参入することが決まりました。当時、南さんの上司だった小澤隆生(現ヤフーCOO)さんが楽天野球団(東北楽天ゴールデンイーグルスの経営母体)で立ち上げをしていて、一方の私は、ソフトバンクホークスのネットサービスを担当していたんです。

 福岡の「ヤフオク!ドーム(現PayPayドーム)」のオープン戦チケットを自分で落札して見に行ったんですが、その時に、楽天野球団の人たちがパ・リーグの会合で訪れていたので、誘ったんです。それが初めての出会いでした。

 それ以降、南さんと交流するようになりました。

 彼の印象は、とにかく能力が高いこと。知力も身体能力も優れていて、押しも強い。相当な人物だなということは常に感じていました。

 おもしろいのが、私と南さんの交流が間接的にビズリーチの創業につながっているということです。

 2008年ごろ、僕が主催している勉強会があったんです。いわゆる「インテリジェンス」について学ぶ会で、米国のNSA(国家安全保障局)みたいな組織について勉強していたんだけれど、そこである専門家が、「ビジネス・インテリジェンス」という分野の存在を教えてくれたんです。

 しかも、それを学べる研修プログラムが米国である、と。「経営者なら、これからはそういう素養も身につけた方がいい」、と言われたんですね。

――『突き抜けるまで問い続けろ』の中でも紹介したエピソードです。米ボストンにある「アカデミー・オブ・コンペティティブ・インテリジェンス」のことですよね。

川邊:企業の経営企画部門などで働く社員向けに、「ビジネス・インテリジェンス」と呼ぶ最先端の情報収集・分析手法を教えているんです。

 それで、誰かを送り出そうということになって、みんなで相談して南さんにお願いすることになったわけです。大半が英語ができない中で、彼は帰国子女だから図抜けていたんです。

 帰国して、その報告を聞いたんだけど、その時に言っていたのが「LinkedIn(リンクトイン)」の話でした。

「LinkedIn」というサービスがあって、ビジネス・インテリジェンスでも情報収集ツールとして使われているんだけど、相当おもしろい、と。詳細は覚えていないんだけど、人材の流動化を促すおもしろいビジネスがアメリカで成長している。そのことを、彼が熱心に話していたんですよ。

 結局、その1~2年後にビズリーチを創業しますと報告をもらったんだけど、実は研修の時の体験が一つのきっかけになっていたと後で聞きました。(談)

 今回、紹介したエピソードのほか、ビズリーチの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』では、起業の悩みから急拡大する組織の中で生まれる多様な課題(部門間の軋轢や離職者の急増、組織拡大の壁)を、創業者たちがどう乗り越えてきたのかがリアルに描かれています。