転職サイト「ビズリーチ」などを運営する巨大スタートアップ、ビジョナル。『突き抜けるまで問い続けろ』では創業後の挫折と奮闘、急成長を描いています。ビジョナル創業者、南壮一郎氏の経営に大きな影響を与えた人物の一人が現ヤフーCOO(最高執行責任者)の小澤隆生氏です。南氏が東北楽天ゴールデンイーグルスの創業メンバーとして働いてた際の直属の上司であり、今も「事業立ち上げの師」と仰ぐ人物。小澤氏は「問いを立てる力」とは「仮説づくり」だと語りました。(聞き手は蛯谷敏)

ヤフーCOO小澤隆生氏「成功事例を徹底的に調べて勝ちパターンを探れ」プロ野球「楽天イーグルス」立ち上げ時、南氏の上司だった現ヤフーCOOの小澤隆生氏

――ビジョナルの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』のテーマでもある「問いを立てる力」。小澤さんにとって、「問いを立てる力」とは何でしょう。

小澤氏(以下、小澤):僕は「仮説づくり」と言っています。ある領域の事業に進出しよう、あるいはうまくいってないものを立て直そう、といった時にどうするか。

 世の中には、基本的にうまくいっている会社があるわけです。「なんでうまくいっているんだっけ」というのを世界中から5社ぐらい、つぶさに調べていくと、おのずと見えてくるものがあるんだよね。

 例えば「人を笑わせよう」というお題があるとします。

 競合分析として、あるお笑い集団を調べた。すると、中心のメンバーがこけて、観客がみんな笑っている。「そうか、競合はこけて笑いを取っているぞ」となる。じゃあ、自分たちもこけて笑いを取ったらいいんじゃないか、と同じことをしようとするわけ。

 でも、お笑い集団のスターがこけた場合と、自分たちがこけた場合では意味が違う可能性もある。そもそも見ず知らずの人がこけて、競合と同じように笑いが取れるのか。

 そこで、さらに調べていく。この集団以外にも、競合を何社も調べていく。もしくは、この集団をより深く分析する。

 すると、ある別のシーンでは違うメンバーが、たらいが上から落下して頭に当たって笑いをとっていることを発見した。これらを総合すると、どうやら「予期せぬことが起きている」ことが要素なのではないか、という仮説ができてくるわけです。

――非日常的で、かっこ悪いことが起きている、と。

小澤:そうしたら、今度はその仮説に立って、さらにほかの例を調べていきます。別のお笑いの集団は落とし穴に落ちた。みんな笑っている。ブーブークッションに座って笑っている。ところが予期せぬこととはいえ、交通事故では誰も笑わない。

 つまり非日常的で間抜けなことが、どうやらカギを握っているということになる。

 そうしたら、その軸でさらに競合を分析して、「どうやらこれだ」という確信に変えていくわけです。

 これが、僕の言う「仮説づくり」のプロセスなんです。一度このパターンを会得すると、いろいろなケースに応用できるようになります。(談)

 今回、紹介したエピソードのほか、ビジョナルの創業ノンフィクション『突き抜けるまで問い続けろ』では、起業の悩みから急拡大する組織の中で生まれる多様な課題(部門間の軋轢や離職者の急増、組織拡大の壁)に、ビズリーチ創業者たちがどう乗り越えてきたのかがリアルに描かれています。