「SAVETITANFALL.COM」は、『Titanfall』について「正常にプレーできない状態で販売を続けるなんて詐欺」と糾弾していたようだが、これがたとえば『Titanfall』がゲームでなく、不具合のある冷蔵庫であったなら、ユーザーは『Titanfall』なる冷蔵庫には固執せず、消費者センターなどを利用してしっかり返品・返金を行ったのち、別の冷蔵庫を買い求めて話は終わっていたはずである。

 しかし『Titanfall』は冷蔵庫ではなく、熱狂的なファンを獲得しうる二次元創作物である。だからファンも不具合がこの上なく歯がゆいし、固執してしまう。

 こうしたユーザーの傾向を、作り手側はどう受け止めるのが賢明なのであろうか。はっきり言ってユーザー一人ひとりの意向に沿うのは不可能である。なので、誠意を極力わかる形で見せて、ひとりでも多くのユーザーに納得してもらえるよう努めるのが、苦しいが制作サイドが打てる最善手なのではあるまいか。

こういう時、任天堂の対応はどうなるのか

 たとえば筆者がどっぷりハマっていた任天堂の『スプラトゥーン』は、非常にユーザーを大事にしていた。その姿勢は各所に見られたが、一例を挙げてみたい。

 『スプラトゥーン』は対戦型のゲームで、いろいろな武器が用意されている。しかし武器ごとにあからさまな強弱があって、開発陣はゲームリリース後、この武器間の強さの調整を延々と行っていくことになる。

 しかしこれが大変な作業で、あっちを弱くすればこっちが強くなり…というのを繰り返す。ユーザーはそれに翻弄されるはかない存在であり、やはり理不尽なまでに強く設定された武器に倒されるとつい「任天堂ォー!」と怒りがもれる。任天堂によって提供された神コンテンツなのだが、コンテンツを愛しすぎるがゆえに怒りの矛先も任天堂へと向かうのである。

 武器間の調整が行われたデータがアップデートされると、Twitterの公式アカウントのリプライ欄は「マシな調整しろ、無能運営」などといったコメントであふれかえる。しかし任天堂は誠実に丁寧に調整を続け、ついには参考意見を得るためにきちんと月給を払う形でテストプレーヤーの採用まで始めた。

 こうした事実を知っているので、ゲームをプレーしている最中はトサカに来ることもあるのだが、「いや、任天堂は本当によく頑張ってくれている」と、その真摯な姿勢に恐れ入る気持ちに自然となれる。

 『Titanfall』の開発・販売元は、はたしてどのようなことをこれまでしてきたのか、筆者はまったく知らない。開発元Respawn Entertainmentのコミュニケーション・ディレクターは「チームはDDoS問題への取り組みを停止したことはない」と話していて、努力がうかがえる(参照)。

 しかしそれを、もしかしたらユーザーにもっとわかりやすい形でアピールできれば、なおよかったのかもしれない。ユーザーは、愛しているコンテンツが開発・販売元から大事にされているところを見たいのである。しかし、先に書いている通り愛憎は表裏一体なので、開発・販売元はここをうまくしないと一気に怒りを向けられるし、「だからクラッキングを受けたんじゃ…」などの臆測の元となる。

 SNSの普及が当たり前になって、多くのゲームがSNSの公式アカウントを持つようになった。開発・販売元は情報の発信を容易にできるようになったが、ユーザーもその情報の更新を当たり前のように求めるようにもなった。多くのユーザーを納得させるには、SNSが肝である…そう思わされるクラッキング騒動であった。